子供を育てているという幻想

こんにちは、新宿、横浜で活動しているバレエトレーニングディレクターの猪野です。

 

生徒に指導をする時に褒めたり叱ったりしますよね。その先生の経験から叱るほうが効果があるとか、褒める方がいいとか、やり方はそれぞれにあるかと思います。

 

でも人間て思いのほか幻想の中で生きている生き物です。経験則から正しいと思っていることが必ずしも正しいとは限りません。実は、教える側なんて関係なく子供というものは育っていくものだったりするということです。

結果を自分の努力に関連づけてしまう

幼児体形の子供がいたとします。すごくお腹が出ています。先生はそれがすごく気になるのでレッスンの度に注意していました。中学生になるころにはお腹も引っ込んでとても綺麗に踊れるようになりました。めでたし、めでたし。

 

さて、いかにも先生が口を酸っぱくして根気強く注意を続けたために、お腹が引っ込んだようなエピソードですが、子供の幼児体形は内臓が身体の大きさ的に体幹部に収まりきらないため、それが仕方なく前に出ているからだったりします。だから、成長と共にそれが収まればお腹は引っ込みます。なので、先生の注意があろうとなかろうと引っ込むときは引っ込みます。

 

もし、それが長く続くようなら腹筋の弱さと言えなくもないですが、立ち方の問題が大きいことが多いです。バレエでよくある反張膝でのエックス脚の子はどうしてもお尻が出て骨盤が前に傾くので、幼児体形のような立ち方になりやすいです。この場合、お腹が出てることを指摘したところで本人もわかっているし、でも自分では直せないので、先生が立ち方をきちんと教えればすぐに引っ込みます。

 

О脚なんかでも起こります。子供はО脚とx脚を繰り返しながら成長するわけですが(赤ちゃんの時はみんなО脚)、なんだか心配になって「もしかしたらバレエのせいでО脚なんじゃないかしら!?」とか思いたくなりますが、あまり心配いらないです。バレエのせいというのは幻想かもしれません。成長過程では普通のことです。

 

 

少し話が逸れましたが、先生が教えるまでもなく生徒自身の成長で解決する問題は先生が褒めようが叱ろうが関係なく時間が解決します。でも、教える側は自分が指導したから上手くいったという幻想に陥りがちです。

 

例えるなら人間が鳥のひなに飛び方を教えるようなもので、誰が育てたところで成鳥になれば勝手に飛びます。でも、つい「私が航空力学の本を読んで羽ばたき方を毎日教えたからあのヒナは飛べたんだ」と思いたくなるのです。

 

自分の教えていることが生徒の成長をきちんと促すものであるのか、ただ目についたものを指摘するだけで教えた気になっていないか、気を付けたいものです。

 

 

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  • ABOUT

    猪野 恵司 -Keiji Ino-

    バレエトレーニングディレクター
    プロフィール詳細

    カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で機能解剖学を学ぶ。
    大学卒業と同時にサクラメントバレエ団でプロダンサーとして活躍。退団後はバレエ専門のパーソナルトレーナーとして活動している。