こんにちは、新宿、横浜で活動しているバレエトレーニングディレクターの猪野です。
バレエの為にピアノを習うなんてことはよく聞く話です。
そうでなくても、子供に可能性を与えたい!なんて考えている親御さんは習い事の一環としてピアノをさせていることも多いでしょう。
そこで思うのが、楽器をやらせると子供の音楽性は踊りに生きてくるのか?という疑問です。
結構多くの人が「そうに違いない」と考えると思いますが、本当にそうなのか?という事を考えて今回は書いてみます。
楽器が出来る子はいたけども…….
私が生徒としてダンスを習っていた頃、周りにはピアノも弾ける子が何人かいました。
その子たちの踊りに対する音楽性が他よりもあったかというと、うーん、どうだろう?という印象が強いです。楽器が出来なくても踊りの上手い子はいるわけで。
踊りの音楽性がピアノと直結していたとして、明らかに違いがあるならばもう少しピアノを出来る人が多かったり、「あの子いい音楽性ね。ピアノをやってるの?やっぱりね。」みたいな会話がもうちょっと当たり前になってそうなのに、なんだかそうでもない気がします。
楽器が弾けた方が音が取れるようになるという意見もあると思いますが、そもそも普通にレッスンしていたら音はとって然るべきだと思うのです。
音楽の成り立ちは勉強した方が良いでしょう。でも楽器を弾ける必要はあるかというと疑問です。音感が必要な歌なら楽器の必要性は分かるのですが。
話が変わりますが、バレリィーノトレーニングのホームページを作れた方はドラムをやられていて、生徒さんに教えたりもするレベルの方なんです。
それで前に「ドラムでリズムが刻めてあれだけ手足を自由に動かせたら、踊りをやっても上手いのではないですか?」と聞いてみたら
「いえ、自分は踊りになるとチグハグになって全然ダメなんですよー(笑)」って言っていたのです。
いかにも踊りの上達を助けてくれそうな楽器を弾ける能力なんですが、どうして意外と関係なさそうな印象を自分が持っているのかを考えてみました。
その1 抗重力筋が関係しない
ダンスと1番の違いは楽器を弾く時にあまり立たないということが考えられます。
体重を支えながら脚を動かして踊ることと、座った状態で脚を動かしてペダルを踏んだりするというのでは使う筋肉が全然違うはずです。
頭でリズムを刻めるはずの音楽家が踊りになった時に踊れないのは、身体を支えて動かす練習をしていないからと思っています。
一口にリズムをとる、音楽に合わせるといっても身体の中で起きていることがまるで違うので繋がってこないのでは?と思うわけです。
あ、だからギターを立って弾いてる人はピアノの人より踊りが上手いかも。
その2 脚は手の指より重い
同じリズムを刻むとしても手の指を動かすエネルギーと脚全体を動かすエネルギーは大きく違います。
音は頭で捉えていたとしても、脚がその速さについて行かなかったら遅れていることになります。
アレグロをピアノで弾けても、アレグロジャンプが出来るかは別問題な訳です。
外で走り回って足の速い子の方がアレグロジャンプは出来るのでは?と思っています。
その3 運動学的に楽器と踊りに相関性がない
運動学では特異性の原理というのがあって、鍛えた場所しか強くならないというものがあります。
例えば、ランニングマシンで走るという動作をたくさんやると、道で走るという動作も向上しやすくなります。
これはランニングマシンと道で走るという動作がすごく似ているために(同じじゃないのですよ!)起こります。
楽器を弾くということを沢山やっても、踊りの動きそのものは全然違うことをするので脚が上がったりすることはないでしょう。
指先が超絶技巧の曲を弾けても、脚が超絶技巧に動くのは別の訓練が必要だということです。
今の私の考えとして、つまりは運動能力の向上なしでは、音楽性が向上しても目には見えないというところでしょうか。
楽器が役に立つのは大分先の話?
昔ミルワーキーバレエのバレエマスターが音楽も聞かずにその楽譜を見ながら頭の中で振り付けをしているのを見たことがあります。
ものすごいカッコいいと思ったわけなのですが、彼の中で音楽と踊りはかなりリンクしているように見えました。
音楽をすることが踊りに活きないという結論にはまだ至っていません。
ただ音楽と踊りが繋がってくるのって、実は結構高いレベルになってからなのでは?とは思います。
踊りのレベルが低い時は特にみえないが、ある程度高いレベルに達した時、楽器が弾けるレベルの音楽性が身体能力と掛け合わさってすごいダンサーになる、というのが今の私の考えです。
いつまでも疑問の尽きないバレエの世界であります。
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