左右木先生のワークショップを見ていて感じた事

こんにちは、新宿、横浜で活動しているバレリィーノトレーニングディレクターの猪野です。

 

先日、左右木先生のワークショップに見学をさせて頂きました。色々と感銘を受けて左右木先生の指導を分析しようと思ったのですが、結局の所以前に北海道のバレエ、スケーターの為のトレーナーである森脇さんと大体同じ結論になってしまいました。

 

ただ、その中で森脇さんが書いていないものも含めて私が感じた所を紹介します。

 

どうやら疲れないらしい

左右木先生は指導をすることにおいて疲れるという感覚がないようです。今回まず驚いたのがそのスケジュールです。朝の10時に始まり、クラス毎にたった10分の休憩を挟み終わるのが夜の10時です。

その間の休憩時間は全て合わせて40分ほどです。しかも8歳くらいの子供が退屈しないように始めからテンションが最大でそれを約12時間継続されてました。

 

ご自身も「全然平気なのよ」と言ってました。さすがに真似出来ないスタミナです。

 

説得力が桁違い

バリエーションの指導も見学していたのですが、見学にはその生徒さんを普段教えている先生もいらしていたりしました。

 

最近はトゥシューズが年齢が10歳以下にはリスクが高いことが分かってきましたが、トレーナーである私がそのことを伝えてもやはりシューズを履かないという選択肢は教室の手前選びにくいものです。

 

ところが、コンクールの審査員をされている左右木先生が、「それは危ないし、点数にはなりませんよ」と言えば、あら不思議みなさんその言葉を聞くのです。

 

脚を高く上げているだけの生徒さんも同じで、「そんなに脚を上げても点数にならないし、膝が曲がってたら減点だよ」と言えば生徒さんは脚を上げるのではなく形を気にして踊るようになります。

 

コンクールの専門家および審査員本人ならではの点数になる所、ならない所を指導出来ることで非常に効率の良いプライベートレッスンになっていました。

 

人間はやはり現金なものと言えばそうなのですが、審査する側のアドバイスの説得力はやはり桁違いです。

コンクールに使われるあらゆる振付が頭に入っている

左右木先生は基本的にワガノワメソッドだそうです。そこに知識があるのは当然といえば当然なのですが、コンクールに主に使われるバリエーションのオリジナルの振付が大体頭に入っているようです。

 

しかも、いくつかのメソッドの違いも含めて。さらに、オーロラとかスワニルダの振付を踊って見本を見せていたりするのが物凄いのです。

 

女性のバリエーションですから、遊びでやる事はあるにしてもプロダンサーでも異性の踊りなんて一生やらずに引退しますよ普通は。

私ならオーロラの見本なんて見せる気にもなりません。

 

普通のバレエ教師ならオリジナルの振付なんてほとんど知らないまま指導してしまうのではないでしょうか。

オリジナルの振付に沿うことで大きなコンクールで審査員のレベルが上がれば上がるほど、ダンサーの評価もきちんとした指導を受けているということで高まっていきます。

生徒に成功体験をさせるのが上手い

森脇さんが書いていた「教える順位を最適化している」と同じことではあるのです。今直せるものを優先するということは逆に言えば今改善しないことを後回しに出来るということです。

 

そうすると、生徒は自分が指導を受けたことによって「上達した」と感じます。それがもう一つ改善が難しかった問題へ挑戦する気持ちを生むことになるのです。

 

言い換えれば、生徒に根拠のある自信を持たせるのが上手いのです。

 

 

後の私の印象は森脇さんと同じです。

 

左右木先生自身も森脇さんも言っていましたが、指導法自体が体系化されているわけではないので第二の左右木先生を作っていくのは難しい印象が私にもありました。もちろん学ぶことは沢山ありますよ。

 

左右木先生は謙遜されていましたが、同業者であるバレエの先生は「学ぶ」という覚悟をもって見学なりをされることをお勧めします。

 

自分の指導してきた生徒の問題点があっという間に解決されたりすると自信喪失は避けられない可能性があります。その意味で今回来ていたバレエの先生方には心より敬意を表します。

 

上記のリスクがあっても見たいという気持ちのあるバレエ教師が日本に増えることを切に願うものであります。

 

 

 

 

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    猪野 恵司 -Keiji Ino-

    バレエトレーニングディレクター
    プロフィール詳細

    カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で機能解剖学を学ぶ。
    大学卒業と同時にサクラメントバレエ団でプロダンサーとして活躍。退団後はバレエ専門のパーソナルトレーナーとして活動している。