こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

バレエのレッスンでは、よく「プリエができていない」「もっとプリエを使って」と言われることがあります。

しかし、バレエ界の人間は感覚派が多いので、わからない人間にとってはさっぱりわかりません。

では、何を見て「できていない」と判断しているのか。

膝の曲がる量なのか。
膝の向きなのか。
体重のかけ方なのか。
床を押す方向なのか。
次のジャンプや回転への準備なのか。

ここがはっきりしていなければ、「プリエを使って」と言われても、生徒側は何を直せばいいのかわかりません。

バレエにおけるプリエは、ただ膝を曲げて伸ばす動きではないのです。

曲がる方向、立ち上がる方向、足裏の圧、股関節と骨盤の関係、音楽の中でのタイミングを整理し、次の動きへ身体をつなげるための動作です。

つまり、プリエができていないとは、膝が曲がっていないという単純な話ではありません。

曲がる方向がずれている。
立ち上がる方向が曖昧になっている。
足裏の圧が無意識に流れている。
股関節の角度変化に骨盤が対応できていない。
次のジャンプや回転に必要な準備になっていない。
音楽の中で身体の変化を処理できていない。

このような状態まで含めて、プリエを見ていく必要があります。

プリエは最初の曲げ伸ばしではない

プリエはバーレッスンの最初に出てくるため、軽い準備運動のように扱われることがあります。

もちろん、身体を温める役割はあります。

しかし、本来のプリエはそれだけではありません。

プリエでは、その日の身体の状態を確認します。

足裏のどこに体重が乗っているのか。
膝は足先と同じ方向へ進んでいるのか。
股関節は無理なく動いているのか。
骨盤は前後左右に逃げていないか。
背骨の長さは保てているのか。
立ち上がるときに、床から力が返ってくる感覚があるのか。

これらを確認せずに膝だけを曲げ伸ばししていると、プリエはただの形式になります。

見た目はシンプルです。

しかし実際には、足部、膝、股関節、骨盤、背骨、音楽のタイミングが同時に関わっています。

だからこそ、最初のプリエをなんとなく行うと、その後のジャンプや回転で問題が大きくなります。

大きな振りになればなるほど、どのようにプリエを使うのかを変えなければいけません。

その変化に対応するためにも、重要になるのが最初のバーになるのです。

プリエで曲がる方向がずれると、次の動きもずれる

プリエで最初に見るべきなのは、曲がる方向です。

膝を曲げるときに、身体全体がどこへ向かっているのか。
足裏の圧はどのように移動しているのか。
股関節はどの方向へ動いているのか。

ここが曖昧なままでは、本人は普通にプリエをしているつもりでも、身体は毎回少しずつ違う方向へ沈んでいきます。

たとえば、膝が内側に入りやすくなる。
骨盤が前に傾いたり、後ろへ引き込まれたりする。
体重がつま先側や外側に偏る。
足指で床をつかんで固めてしまう。

このようなずれがあっても、プリエ単体では大きな失敗に見えないことがあります。

ここが難しいところです。

プリエで少し方向がずれていても、動作自体は最後までできてしまいます。
転ぶわけでもありません。
音楽にも、なんとなく合わせることはできます。

だから本人は、プリエの段階で失敗しているとは感じにくいのです。

ところが、そのずれたプリエの上にジャンプが加わります。
回転が加わります。
移動が加わります。
腕、顔、視線、音楽の速度も加わります。

バレエの動きは、要素が一つずつ足されるだけではありません。

最初の方向性が曖昧なまま複雑な動きに入ると、エラーは掛け算のように増えていきます。

だから、ジャンプや回転がうまくいかないとき、動きそのものだけを練習しても解決しないことがあります。

原因は、その前のプリエにあるかもしれません。

プリエで立ち上がる方向が決まっているか

プリエでは、曲げることだけでなく、立ち上がる方向も重要です。

多くの人は「どれくらい曲げるか」に意識が向きます。

しかし、バレエで使えるプリエにするためには、「曲がった後にどこへ向かうのか」を考えなければいけません。

その場で安定するためのプリエ。
上へ跳ぶためのプリエ。
回転に入るためのプリエ。
横へ移動するためのプリエ。
片脚に乗り換えるためのプリエ。

これらは、すべて同じではありません。

同じように膝を曲げているように見えても、次の動きによって必要な準備は変わります。

ジャンプであれば、床を押して身体を上に運ぶ準備が必要です。
回転であれば、立ち上がる瞬間に軸を作る必要があります。
移動であれば、次の場所へ身体を送る方向性が必要です。

深く曲げればよいわけではありません。

深く曲げても、次の動きに必要な方向へ力がつながっていなければ、使えるプリエにはなりません。

股関節と骨盤の変化を見落とさない

プリエで見落とされやすいのが、股関節と骨盤の関係です。

膝を曲げていくと、股関節の角度が変わります。
股関節の角度が変われば、骨盤の位置にも影響が出ます。
その過程で、股関節まわりの筋肉や靭帯の張り具合も変わります。

この変化によって、骨盤が安定しやすい位置もあれば、不安定になりやすい位置もあります。

曲げていく途中で骨盤が前に傾きやすい人もいます。
反対に、骨盤を後ろへ引き込みすぎる人もいます。
左右どちらかの股関節だけが詰まり、体重が片側へ逃げる人もいます。
膝を外へ向けようとしすぎて、足裏の圧が外側に偏る人もいます。

これは、気合いや力で解決する問題ではありません。

身体にはそれぞれ特徴があります。

どの深さで安定しやすいか。
どの角度で逃げやすいか。
どの方向に力が入りやすいか。

それは人によって違います。

だからプリエでは、形に身体を押し込むのではなく、自分の身体が曲げていく途中でどう変化するのかを感じる必要があります。

どの深さで骨盤が逃げやすいのか。
どこで足裏の圧が変わるのか。
どのタイミングで上体が固まりやすいのか。
股関節の詰まりによって膝の方向が変わっていないか。

ここを確認しないまま「膝を外へ」「上体をまっすぐ」「もっと深く」と言っても、根本的な修正にならないことがあります。

もちろん、膝の方向や上体の長さは大切です。

ただし、それだけでプリエを見てしまうと、身体の中で起きている変化を見落とします。

足裏の圧が整理されているか

踊りの中でプリエを使うためには、足裏の圧も重要です。

足裏のどこに体重が乗っているのか。
母趾球側に寄りすぎていないか。
小趾球側に逃げていないか。
かかとに残りすぎていないか。
土踏まずが潰れていないか。
足指で床をつかみすぎていないか。

足裏の圧が整理されていないと、膝や股関節の方向もずれやすくなります。

足部が潰れれば、床を押す力は伝わりにくくなります。
足指で固めれば、床を押しているのではなく、足先でしがみついている状態になります。

さらに踊りになると、体重は常に移動します。

両脚から片脚へ。
片脚から反対の脚へ。
その場から前へ、横へ、斜めへ。
回転へ。
ジャンプへ。

そのたびに、足裏の圧も変化します。

大切なのは、体重が無意識に流れているのか、次の動きに必要な場所へ狙って移しているのかです。

自分がどこに乗っているかわからないまま踊るのと、必要な方向へ圧を移しながら踊るのでは、プリエの意味がまったく違います。

音楽に合わせるとは、カウントに合わせるだけではない

プリエを音楽に乗せることも、単にカウントに合わせるという意味ではありません。

曲がり始めるタイミング。
一番深くなる位置。
立ち上がり始める瞬間。
伸び切るまでの流れ。
次の動きへ移る準備。

これらが音楽の中で整理されているかどうかです。

プリエが遅れる人は、曲げる方向や体重移動に迷いがあるかもしれません。
早く終わってしまう人は、身体の重さを感じる前に形だけを作っているかもしれません。
立ち上がる瞬間に固まる人は、床を押す方向が整理されていない可能性があります。

音楽に合わせるためには、自分の身体の状態を無視できません。

どの深さなら安定しているのか。
どの速度なら足裏の圧を感じたまま動けるのか。
どのタイミングなら次の動きに間に合うのか。

これを処理しながら動くから、プリエは踊りにつながります。

プリエを上達させるために見るべきこと

プリエを上達させるには、まず深さを目的にしないことです。

最初に確認するべきなのは、どこへ曲がり、どこへ立ち上がるのかです。

次に、足裏の圧を確認します。

曲げる途中で体重がどこへ移動するのか。
立ち上がるときに、どこから床を押しているのか。
足指で固めていないか。
かかとに残りすぎていないか。
足の外側に逃げていないか。

さらに、股関節と骨盤の関係を見ます。

曲げていく途中で骨盤が前後に逃げていないか。
左右差が出ていないか。
股関節の詰まりや張りによって、膝や足裏の方向が変わっていないか。
深さを出そうとして、骨盤の位置を崩していないか。

そのうえで、音楽の中で処理します。

どのタイミングで曲がり始めるのか。
どこで一番深くなるのか。
どの流れで立ち上がるのか。
次の動きに間に合う準備になっているのか。

ここまで見て初めて、プリエは踊りにつながる練習になります。

ジャンプや回転が安定しないときこそ、プリエを見る

ジャンプが安定しない。
回転で軸が外れる。
着地が乱れる。
片脚に乗れない。

このような問題があるとき、多くの人はジャンプや回転そのものを直そうとします。

もちろん、その練習も必要です。

しかし、その前にプリエを確認するべきです。

ジャンプで床を押せない人は、プリエの時点で床に力を伝える方向が曖昧かもしれません。
回転で軸が立たない人は、立ち上がる方向がずれているかもしれません。
着地で乱れる人は、降りるときの足裏の圧や股関節の受け方が整理されていないかもしれません。
片脚に乗れない人は、両脚プリエの時点で左右の圧に偏りがあるかもしれません。

プリエは、次の動きの原因になります。

だから、バーの最初のプリエをなんとなく済ませたまま、後の動きだけを直そうとしても限界があります。

なにかの動きができないときは多くの場合、その原因はそれ以前に振りに存在することが多いです。

大人からバレエを始めた人ほど、プリエを感覚任せにしない

特に大人からバレエを始めた人は、プリエを感覚任せにしないことが大切です。

子どもの頃からバレエ特有の身体感覚を積み上げてきた人と違い、大人は動きの意味を理解しながら練習した方が上達しやすい場面があります。

膝を曲げること自体は誰でもできます。

しかし、バレエのプリエとして使うには、曲がる方向、立ち上がる方向、足裏の圧、股関節と骨盤の状態、音楽との関係を少しずつ整理していく必要があります。

これは、最初から完璧にできるものではありません。

ただ、何を確認すればいいのかがわかれば、プリエは確実に変わります。

なんとなく深く曲げるのではなく、自分の身体がどこで安定し、どこでずれやすいのかを知る。

この視点があるだけで、バーレッスンの最初のプリエはまったく違う練習になります。

プリエは、身体を読み取る練習である

「プリエができていない」という言葉は便利です。

これを使うだけでそれっぽい指導に聞こえるからです。

しかし、何ができていないのかを説明できなければ、指導としては不十分です。
生徒も、何を修正すればよいのかわかりません。

プリエは、バレエの最初に出てくる簡単な動きではありません。

ジャンプ、回転、移動、片脚バランスにつながる、非常に重要な基礎です。

プリエで見るべきことは、膝の曲がる量だけではありません。

今日の身体はどういう状態か。
曲がる方向は狙い通りか。
立ち上がる方向は次の動きにつながっているか。
股関節や骨盤の変化に対応できているか。
足裏の圧を感じているか。
音楽の中で動きを処理できているか。

ここまで見て初めて、プリエは上達のための練習になります。

プリエは、ただ曲げるものではありません。

自分の身体の状態を読み取り、次の動きに必要な方向へ整え、音楽の中で使えるようにしていくものです。

プリエの質が変わると、ジャンプや回転だけでなく、踊り全体の安定感が変わります。

だからこそ、「プリエができていない」という言葉で終わらせるのではなく、何が、どの方向に、どのタイミングで、どうずれているのかを見ていく必要があります。

その視点を持つことが、プリエを本当の意味で練習する第一歩です。

大人バレエアカデミー™では、プリエを単なる曲げ伸ばしとしてではなく、身体の状態を確認し、次の動きにつなげるための基礎として丁寧に見ています。

大人からでも、基礎を具体的に理解しながら練習すれば、バレエは少しずつ変わります。

よくある質問

Q. プリエができていないとは、膝が曲がっていないという意味ですか?

A. それだけではありません。膝の曲がる量だけでなく、曲がる方向、立ち上がる方向、足裏の圧、股関節と骨盤の状態、次の動きへのつながりまで含めて考える必要があります。

Q. プリエは深く曲げた方がいいですか?

A. 深さだけを目的にする必要はありません。深く曲げても、骨盤が逃げたり、足裏の圧が崩れたり、次の動きにつながらなければ、使えるプリエにはなりません。

Q. ジャンプや回転が苦手な場合も、プリエを見直した方がいいですか?

A. 見直した方がいいです。ジャンプや回転の失敗は、その動き自体ではなく、準備であるプリエの方向性や足裏の圧のずれから起きていることがあります。

Q. 大人からバレエを始めた人は、プリエで何を意識すればいいですか?

A. まずは、膝を曲げる量よりも、どこへ曲がり、どこへ立ち上がるのかを確認することです。そのうえで、足裏の圧、股関節と骨盤の安定、音楽の中でのタイミングを少しずつ整理していくことが大切です。

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