こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

バレエを長年続けていると、

急にうまく踊れなくなる時があります。

 

前はできていたはずなのに、

なぜかできない。

回れていたはずなのに回れない。

跳べていたはずなのに跳べない。

バランスが急に不安定になる。

いわゆるスランプです。

 

スランプには、

精神的なものもあります。

肉体的なものもあります。

その中で、

肉体的なスランプについては、

私は基本的に

「身体感覚のズレ」

だと考えています。

 

自分がイメージしている身体の動きと、

実際に起きている身体の動きが、

少しズレている。

そのズレによって、

今までできていたことが急にできなくなるのです。

 

たとえばプリエです。

自分では膝を45度くらい曲げているつもりでも、

実際には50度くらい曲がっていたとします。

たった5度の違いです。

 

でも、ジャンプやターンでは、

この5度が大きく影響します。

プリエが深くなれば、

立ち上がるまでの時間が変わります。

立ち上がる時間が変われば、

回り始めるタイミングも変わります。

 

ターンの場合、

この小さなタイミングのズレが、

軸や腕や顔の使い方にまで影響します。

自分ではいつも通り回っているつもりなのに、

実際には身体の準備が少し遅れている。

 

だから、

「なぜか回れない」

という状態になるのです。

成長期の子どもには、

こういうことは珍しくありません。

急に身長が10センチ伸びれば、

脚の長さも、

腕の長さも、

重心の位置も変わります。

 

当然、

今までの感覚では動きにくくなります。

一時的に回れなくなったり、

跳べなくなったりすることもあります。

 

これは身体が変わっているので、

ある意味では自然なことです。

 

そして、

大人にも同じようなことは起こります。

筋力が変わった。

柔軟性が変わった。

疲労が溜まっている。

姿勢の癖が変わった。

レッスンの頻度が変わった。

 

 

こうした小さな変化で、

身体の感覚と実際の動きがズレることがあります。

スランプで難しいのは、

できないことそのものではありません。

何がズレているのかを見つけることです。

 

原因が分かれば、

修正する方向も見えてきます。

プリエの深さがズレているなら、

プリエの感覚を直せばいい。

 

腕のタイミングが早くなっているなら、

腕の使い方を確認すればいい。

重心が後ろに流れているなら、

立つ位置を見直せばいい。

 

問題は、

その原因に気づかないまま、

ただ練習量だけを増やしてしまうことです。

 

ズレたまま練習を続けると、

そのズレた感覚が身体に残ってしまうことがあります。

だからスランプの時ほど、

一番基本のところに戻る必要があります。

 

たとえばピルエットがうまくいかない時。

いきなり

「どうすれば回れるか」

を考えるのではなく、

まず一つ手前の動きを見ます。

プリエは以前と同じか。

プリエの深さは変わっていないか。

身体の捻り方はどうか。

腕の準備はどうか。

顔をつけるタイミングはどうか。

立ち上がる方向はズレていないか。

 

このように、

動きを分解して確認していきます。

 

バレエの動きは、

一つひとつがつながっています。

プリエ。

立ち上がり。

腕。

顔。

軸。

重心。

どこか一つがズレると、

その後の動きも崩れます。

 

反対に言えば、

ズレている部分を見つければ、

動きは戻しやすくなります。

 

そのために有効なのが、

ビデオで確認することです。

自分では真っすぐ立っているつもりでも、

外から見ると少し反っていることがあります。

 

自分では十分にプリエしているつもりでも、

実際には浅いことがあります。

逆に、

浅いと思っていたのに、

深く入りすぎていることもあります。

 

自分の感覚と、

実際の動きは、

必ずしも一致していません。

だからこそ、

客観的に見ることが大事です。

 

もちろん、

良い指導者に見てもらえるなら、

それが一番早いです。

 

身体感覚のズレを見抜いて、

「今ここが変わっていますよ」

と指摘してもらえれば、

スランプは長引きにくくなります。

 

ただ、

いつも誰かに見てもらえるとは限りません。

 

だから自分でも、

確認する習慣を持つ必要があります。

・基本に戻る

・一つ手前の動きを見る

・プリエの深さを確認する

・重心の位置を確認する

・腕と顔のタイミングを確認する

・ビデオで実際の動きを見る

スランプの時に大切なのは、

焦って練習量を増やすことではありません。

 

まずは、

どこからズレているのかを見つけることです。

前はできたのにできない。

そう感じる時ほど、

感覚と実際の動きに差が出ている可能性があります。

 

スランプは抜けられます。

身体の感覚と実際の動きがもう一度合ってくれば、

動きは戻ってきます。

むやみに練習して焦るのではなく、

歯車のズレを見つけるように、

一つずつ確認していきましょう。

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