こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

 

バレエの世界には、どこかこういう空気があります。

「バレエが上手くない人は、バレエ界について語ってはいけない」

「舞台で結果を出していない人が、業界のことを言うのは失礼だ」

「踊れない人が、バレエの仕組みに口を出すな」

というものです。

 

もちろん、バレエの技術は大切です。

踊ってきた人。

舞台に立ってきた人。

厳しい稽古を積み重ねてきた人。

その人たちの言葉には重みがあります。

バレエを語るなら、バレエへの敬意は必要です。

 

 

まず一つ言わせてください。

バレエが上手いことと、

バレエ界を良くできることは、違います

 

バレエが踊れることは技術、バレエ界は構造だからです。

次元がまるで違います

 

まずは結論から言わせてください。

バレエがどんなに上手くても、

それだけでバレエ界は救えません。

 

なぜなら、

バレエ界の問題は、

踊りの技術だけで起きているわけではないからです。

古から素晴らしいダンサーはいたわけですが、

それが時代を作ったとは言われても

業界を変えたとかいう話を聞いたことがないです。

 

実際、ダンサーの待遇は70年前と比べてどこまでよくなったでしょうか?

チケットノルマがなくなった?食えないのは変わって無くないですか?

 

踊れることは素晴らしいことです。

でも、それだけでは、

先生やダンサーが食べていけない問題は解決しません。

良い指導者が育ちにくい問題は解決しません。

スタジオ運営が不安定になる問題は解決しません。

大人が本気で上達できる場所が少ない問題は解決しません。

 

踊りの技術と、業界を支える仕組みは、

まったく別の力です。

 

バレエ界は、技術職人の世界です。

だから、

「上手い人が偉い」

という価値観になりやすい。

 

これは、ある意味では自然なことです。

プリンシパルの方が発言権があるのは当然です。

そこまでは良いのですが

 

問題は、

そこから先です。

「上手い人の言葉には価値がある」

という話と、

「上手い人以外の話は正しくない」

という話は、まったく違います。

実際意味がわからないですよね。

 

ここを間違えると、バレエ界はどんどん閉じていきます。

閉じた世界は、内側の価値観だけで回ります。

すると、

外の人に届かない。

新しい人が入りにくい。

お金の話を避ける。

仕組みを作る人が軽く見られる。

先生の努力が報われない。

 

そして結局、

「良いことをやっているのに、広がらない」

という状態になります。

 

広げる努力をしてないのだから当然です。

 

必要なのは、もっと広い力です。

教える力。

伝える力。

人を育てる力。

仕組みを作る力。

数字を見る力。

集客する力。

継続して通える環境を整える力。

先生にきちんと対価が回る設計をする力。

こういう力も必要です。

 

でも、バレエ界では、

こういう力が軽く見られやすい。

「それはビジネスの話でしょ」

「バレエは芸術だから」

「お金の話をするのは下品だ」

そういう感覚が、まだ残っています。

 

でも、私はそうは思いません。

お金の話を避けることが、

芸術を守ることにはなりません。

 

先生が生活できない。

スタジオが続かない。

良い指導が広がらない。

若い才能が将来を描けない。

その状態を放置する方が、

よほどバレエに対して不誠実だと思います。

 

例えば、

ものすごく良い先生がいたとします。

身体の使い方をよく知っている。

音楽性もある。芸術性もある。生徒への愛情もある。

レッスンも丁寧。

でも、集客ができなければ、

生徒は来ません。

 

価格設定を間違えれば、

先生自身が疲弊します。

場所代、広告費、人件費、システム費。

そういう現実を見なければ、

スタジオは続きません。

 

先生の育成制度がなければ、

その先生一人の能力で終わってしまいます。

どれだけ良いレッスンでも、

それを届ける仕組みがなければ、

必要としている人には届きません。

 

これは才能の問題ではなく、仕組みの問題です。

実際、バレエの世界では、

素晴らしい先生ほど安い単価で頑張りすぎて、

心も身体もすり減ってしまうことがあります。

実力のあるダンサーが、

引退後に安定して教え続ける道を作れないこともあります。

生徒はいるのに、

先生の報酬や育成にお金が回らず、

現場だけが疲れていくこともあります。

 

 

真面目で、責任感があって、バレエが好きだからこそ、

自分を削って続けてしまう。

スタジオを運営する勉強もしないで、

なんか頑張って苦労するのですが、

靴も履かずにがんばって歩き回ってなぜ足が痛いのかを理解してない

みたいに私には見えています。

 

勉強もしないで個人の努力だけで支える世界には限界があります。

だから、

仕組みを変えることが必要なのです。個人に必要な勉強をさせるのも仕組みです。

バレエ界には、

「良いものをやっていれば、いつか伝わる」

という考え方があります。

 

残念ながら現実は違います。

良いものは、伝えなければ伝わりません。

価値は、届けなければ届きません。

どれだけ良いレッスンでも、

知られなければ存在していないのと同じ扱いになります。

 

どれだけ素晴らしい芸術でも、

それを支える経済がなければ、

次の世代に残せません。

 

良いことやってたら、いつかはみんな来てくれるなんて大間違いです。

みんなが来てくれる前に、スタジオは潰れます。

 

私は、

バレエそのものを軽く見ているわけではありません。

 

バレエには、もっと価値があると思っています。

大人が本気で身体と向き合える。

年齢を重ねても上達できる。

姿勢が変わる。

身体の使い方が変わる。

音楽の感じ方が変わる。

自分の成長を実感できる。

芸術に触れながら、自分自身も変わっていける。

 

これだけ価値があるものが、

一部の人だけの世界で終わっているのは、本当にもったいない。

 

だからこそ、

バレエを社会に届ける仕組みが必要なのです。

バレエが上手い人は、バレエの価値を身体で示す人です。

それは本当に素晴らしくても

 

バレエの世界を変えるには、

その価値を社会に接続しなければいけません。

 

バレエ界にお金が回る仕組みを作ることは、

芸術を汚すことではありません。

逆で、芸術を守るために必要なことです。

 

先生が報われない業界で、

良い指導が長く続くはずがありません。

若い才能が生活できない業界で、

未来が明るくなるはずがありません。

大人が安心して学べない環境で、

バレエ人口が広がるはずがありません。

 

経営ができる人。

仕組みを作れる人。

教育設計ができる人。

言葉で価値を伝えられる人。

先生が報われる制度を作れる人。

そういう人たちが入ってこない世界は、

結局、内側の努力だけで耐える世界になります。

 

そして、

一番苦しくなるのは現場の先生とダンサーです。

 

 

バレエは、舞台も、レッスンも、スタジオも、

すべて人と仕組みで成り立っています。

だからこそ、

「踊れるかどうか」だけで、

すべての発言権を決めてはいけないのです。

少なくとも前線で戦う人に無駄に石を投げる人は何なのかと思っています。

 

本当に大事なのは、

現場を良くしようとしているか。

生徒の未来を考えているか。

先生の未来を考えているか。

業界に価値が残る仕組みを作ろうとしているか。

 

 

バレエが上手いことだけを絶対的な権威にしてしまうと、

業界の問題は見えなくなります。

 

仕組みの問題を見ないのは違う、と言っているだけです。

 

私は、

バレエで価値を出せる人が報われる世界を作りたいと思っています。

先生が誇りを持って働ける世界を作りたい。

バレエにきちんとお金が回る流れを作りたい。

良い指導が、良い指導のまま続いていく仕組みを作りたい。

 

そのために

その価値がきちんと循環する仕組みを作る必要があります。

 

 

バレエは素晴らしい。

だからこそ、

その素晴らしさを、

一部の人だけのものにして終わらせてはいけない。

バレエを守るために、

バレエを広げる。

バレエを続けるために、

仕組みを作る。

私は、そこに挑戦していきます。

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