大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

 

私は高校生のときにバレエを始め、その後アメリカに留学しました。大学に通いながらバレエを続け、卒業したあとはバレエ団にも入りました。

留学できたことも、大学で勉強できたことも、毎日のようにバレエができたことも、かなり恵まれていたと思います。

しかも、私はバレエそのものについては、かなり無料で学んできました。スクールの先生が無料してくれていたからです。

大学にいたときも、バレエ団にいたときも、今の大人の生徒さんのように、一回レッスンを受けるたびに数千円を払っていたわけではありません。毎日クラスがあって、先生がいて、スタジオがあって、踊る時間がありました。

今、大人バレエアカデミー™に来ている人たちを見ていると、この違いは大きいなと思います。

仕事をして、自分でレッスン代を払って、シューズも買って、時間を作ってスタジオまで来る。

私は、それを毎日のようにできる環境にいたわけです。

だから、私がバレエを続けられたことを全部自分の努力だったとは思っていません。

環境に相当助けてもらっています。

ただ、それだけバレエをやれる環境にいても、私はずっと分からないことがありました。

それが先生の言っている注意でした。

先生が何を言っているのか、ずっと分からなかった

先生が話している言葉の意味が分からないわけではありません。

「引き上げろ」

「ターンアウトしろ」

「お腹を使え」

「背中を使え」

「床を押せ」

何を言っているのかは聞こえています。

でも、その言葉を聞いたあとに、自分の身体で何をすればいいのかが分からなかった。

たとえば「引き上げろ」と言われます。

では、何を引き上げるのか。

どこの筋肉をどう使えばいいのか。

骨盤はどうなっていればいいのか。

肋骨はどうするのか。

頭の位置はどうなるのか。

 

そこまでは説明されません。

「もっとターンアウトしろ」も同じです。

私はターンアウトしようとしている。

でも先生からは足りないと言われる。

では何を変えればいいのか。

股関節なのか。

お尻なのか。

内腿なのか。

足なのか。

そこが分からない。

先生が「違う」と言っていることは分かります。でも、何が違うのかが分からないんです。

 

私はこれがかなり嫌で

自分は言われたことをやろうとしているのに、正解にたどり着くための情報がないからです。

しかも当時は、先生に聞けば全部答えが返ってくるとも限りませんでした。

 

これは今、教える側になってさらに思いますが、バレエの先生だからといって、バレエについて何でも知っているわけではありません。

踊れることと、バレエを知っていることも違います。

バレエ団で踊っていたから教授法を勉強しているとは限らないし、きれいに踊れるから身体の構造を理解しているとも限りません。

自分が先生から習ったことを、そのまま次の生徒に伝えていることもあります。

「私はこう言われたから、あなたにもこう言う」

という教え方です。

それで伝わる人もいると思います。

でも、自分がその言葉で分からなかった人間なので、それでは困るんです。

「引き上げて」と言われてできない人に、もう一度「もっと引き上げて」と言っても、たぶんできません。

声を大きくしたところで情報量は増えていません。

私は、先生の言葉と自分の身体の間にあるものを知りたかったんです。

それで大学で身体のことを勉強しました。

自分が分からなかったから、身体のことを勉強した

私が大学で身体のことを勉強したのは、将来バレエ教室を作るためではありません。

当時はそんなことを考えていませんでした。

自分が分からないから調べただけです。

股関節はどういう構造なのか。

骨盤はどう動くのか。

筋肉はどこについていて、どんな方向に力を出すのか。

身体を支えるというのは、実際には何が起きているのか。

そういうことが分かれば、先生が言っていたことも少しは分かるんじゃないかと思っていました。

実際、身体について勉強すると、それまで意味が分からなかった注意がつながることがありました。

「ああ、これを言っていたのか」

と後から分かる。

同時に、

「最初からこう言ってくれればよかったのに」

と思うこともかなりありました。

 

バレエには昔から独特の言葉があります。

その言葉自体が悪いとは思いません。

「引き上げる」も「床を押す」も、バレエをやっている人同士ではある程度通じます。

ただ、その言葉を知らない人や、まだ身体で理解できていない人に教えるなら、もう一段説明が必要です。

私はそこが欲しかったんです。

引き上げができていないなら、「引き上げができていません」で終わるのではなく、今の身体がどうなっていて、何を変えればいいのか知りたかった。

それが分かれば練習できます。

分からなければ練習のしようがありません。

私は大学で身体のことを勉強しながら、バレエの先生から聞いていた言葉を、自分なりに身体の構造へ置き換えていきました。

この経験は、あとでトレーナーになったときにかなり役に立ちました。

トレーナーになって、教え方の雑さに気づいた

日本に帰ってから、私はパーソナルトレーナーになりました。

そこでバレエをやっている人を見ることが増えました。

そのとき、かなり驚きました。

何年もバレエを習っているのに、身体の使い方をほとんど理解していない人が珍しくなかったからです。

 

もちろん本人は真面目に習っています。

レッスンにも行っているし、先生の注意も覚えています。

「いつもターンアウトが足りないと言われます」

「もっと引き上げろと言われます」

「お腹が抜けていると言われます」

では実際に身体を見てみると、本人は何を変えればいいのか分かっていない。

先生から言われた言葉だけが残っていました。

ターンアウトしようとして膝や足先だけを外に向けている人もいました。

引き上げようとして胸を持ち上げ、腰を反っている人もいました。

お腹を使おうとして、息ができないくらい固めている人もいました。

それを何年もやっている。

私は、これを見て本人のセンスの問題だとは思いませんでした。

かなり雑に教えられているなと思いました。

先生自身が、なぜそうするのか分かっていないこともあります。

自分が習ったから

バレエではそういうものだから

先生にそう言われてきたから、生徒にも同じように言っている。

もちろん、それで問題なく伝わることもあります。

ただ、伝わらなかったときに、その先がないんです。

「もっと」

になる。

もっと引き上げて。

もっとターンアウトして。

もっと伸ばして。

できない人からすると、「もっと」と言われても、やり方が分からないのだからどうしようもありません。

私は、自分自身がまさにそこで困ってきたので、バレエを習っている人たちの話を聞くと非常によく分かりました。

その人たちは怠けているわけではありません。

 

むしろ熱心です。

だから言われたことを何とかやろうとしている。

でも説明がないので、自分で考えて何かをするしかない。

そして、そのやり方が間違っていても、自分では分からない。

私はトレーナーとして、「今こうなっていますよ」「ここをこう動かしてみてください」と説明すると、それだけで動きが変わる人をたくさん見ました。

何年もできなかったことが、使う場所が分かっただけで変わることもあります。

そのたびに、できなかったのではなく、知らなかっただけなんだなと思いました。

でも、そこで終わらなかったんです。

身体の使い方が分かっても、それをバレエで試せない

トレーニングで身体の使い方が分かるようになれば、バレエも変わる。

最初は私もそう思っていました。

ところが、実際に生徒さんを見ていると、そう簡単ではありませんでした。

トレーニングで股関節の使い方を練習します。

骨盤を動かさずに脚を動かす練習をします。

ターンアウトするときに、どこから脚を動かすのかも説明します。

トレーニングの時間にはできるようになります。

では、その人が次のバレエレッスンに行って、それをタンデュで試せるか。

ほとんど試せませんでした。

普通のバレエクラスでは、そんなにゆっくり確認する時間がないからです。

先生がアンシェヌマンを見せる。

それを覚える。

音が流れる。

動く。

次のアンシェヌマンへ行く。

バレエに慣れている人からすれば普通の流れです。

でも、身体の使い方そのものを変えようとしている人には、やることが多すぎます。

脚の使い方を気にしながら、腕を動かして、顔をつけて、音に合わせて、順番も覚える。

せっかくトレーニングで一つ覚えたのに、バレエのクラスではその何倍も難しいことを要求される。

これでは新しく覚えた使い方を試せません。

私はここで、「トレーニングだけやっていても駄目だな」と思いました。

身体の使い方を変えて、その使い方をバレエに戻すところまで必要だったんです。

タンデュならタンデュの中でやる。

プリエならプリエの中でやる。

身体の使い方を覚えた直後に、実際のバレエの動きで試す。

その場所が必要でした。

では、普段その人を教えているバレエの先生と話せばいい。

私も最初はそう考えました。

でも、これができませんでした。

先生と連絡すら取れないんです。

先生と連携したくても、連絡すら取れなかった

トレーナーとして考えれば、普段その人を見ている先生と情報を共有したほうがいいのは当然です。

こちらでは今こういう身体の使い方を練習している。

バレエのレッスンではここを確認してほしい。

逆に先生から、レッスン中にこういうところで困っていると教えてもらえれば、トレーニングでもそこを考えられる。

私はそういう連携をしたかったんです。

でも、その仕組みがありませんでした。

先生に直接連絡できない。

生徒さんを通じてしか話ができない。

そもそもバレエ教室側も、外部のトレーナーと連携する前提で動いていません。

身体を見る人と、バレエを教える人が完全に分かれていました。

これはかなり不便でした。

トレーニングで身体を変えるところまではこちらでできる。

でも、そのあとにバレエの技術へつなげるところは別の先生が担当する。

その先生とは話せない。

生徒本人が間に入って、自分で全部つながなければならない。

それでは難しい。

だったら、身体の使い方を教えるところから、それを実際のバレエで使うところまで、同じ場所でやれるようにするしかないと思いました。

自分で作るしかない。

それで作ったのが大人バレエアカデミー™です。

大人のための教室を作りたかった、という話ではない

大人バレエアカデミー™を始めた理由を聞かれると、大人専門のバレエ教室を作りたかったんですね、と言われることがあります。

少し違います。

最初にあったのは、「大人のためのバレエ教室が世の中にないから作ろう」という発想ではありませんでした。

私はトレーナーとしてバレエをやっている人を見ていて、困っていたんです。

身体の使い方を説明しても、それを試す場所がない。

普段のバレエレッスンは難しすぎる。

バレエの先生とも連携できない。

だったら自分で、身体の使い方とバレエをつなげられる場所を作るしかない。

そこから始まっています。

だから、最初から上達することが中心でした。

私は、バレエは上達することが一番楽しいと思っています。

もちろん、音楽に合わせて踊ることも楽しいです。

きれいなウェアを着るのが好きな人もいるし、発表会に出るのが好きな人もいます。

それも全部バレエの楽しさです。

でも、私自身が一番面白いと思うのは、自分の身体が変わって、前までできなかったことができるようになることです。

昨日まで意味が分からなかったことが分かる。

ずっとできなかったことが、あるときできる。

自分の昔の動画を見ると、明らかに今のほうがいい。

私はこれが一番楽しい。

だから大人バレエアカデミー™でも、ただ90分身体を動かして「楽しかった」で終わることを目的にはしていません。

もちろん楽しいほうがいい。

でも、その人が前より少しでも上手くなることを考えます。

そのために何をやればいいのか。

そこで結局、基礎に戻りました。

上達したいなら、基礎をやるのが一番早い

バレエでは、難しいことをやっているほうが上手な人に見えます。

たくさん回る。

脚を高く上げる。

難しいジャンプをする。

複雑なアンシェヌマンを踊る。

当然、それができれば格好いいです。

だから、早くそこへ行きたくなる気持ちも分かります。

でも私は、上手くなるという目的だけを考えたら、まず基礎をやるほうが早いと思っています。

これは自分が踊ってきた経験だけではなく、身体を見てきた経験からもそう思います。

タンデュで骨盤を保てないのに、その脚を高く上げたらもっと骨盤は動きます。

片脚で立ったときに軸が取れないのに、その状態からピルエットを練習しても毎回違うところに倒れます。

プリエで足と膝の方向が合っていないのに、そこからジャンプすれば、もっと速い動きの中で同じことが起きます。

だったら、その一つ前をやればいい。

回れないなら、回る練習だけをするとは限らない。

脚が上がらないなら、脚を上げ続ければいいわけでもない。

何ができていないのかを見て、そこまで戻る。

そのほうが結局早いんです。

ただ、基礎は地味です。

タンデュをやる。

プリエをやる。

またタンデュをやる。

人によっては、もっと踊りたいと思うでしょう。

それでも私は、基礎が一番効率がいいと思っています。

大人はバレエに使える時間が限られています。

毎日何時間も練習できる人はほとんどいません。

週に一回、二回という人も多い。

だったらなおさら、効率がいいことをやったほうがいい。

私はそう考えました。

ただプリエとタンデュをやればいいわけではない

ただし、基礎クラスなら何でもいいわけではありません。

ここは私にとって非常に大事です。

プリエとタンデュをたくさんやれば基礎をやったことになるわけではありません。

私自身が昔困ったのは、まさに基礎のところでした。

「引き上げて」と言われる。

意味が分からない。

それでまたプリエをする。

意味が分からないままです。

「ターンアウトして」と言われる。

どうやるか分からない。

そのままタンデュを繰り返す。

それなら、間違った動きを何度も練習してしまう可能性があります。

だから大人バレエアカデミー™では、基礎をやることと、基礎を理解させることを別に考えていません。

何をしているのかが分からなければ、説明する。

「引き上げて」だけで分からないなら、別の言葉で説明する。

身体を触って場所を確認したほうが分かるなら、そうする。

動きが難しすぎるなら簡単にする。

先生の説明で分からなければ、分からない生徒のせいにするのではなく、先生側も伝え方を考える。

私は、自分が教わったときにここで困ったので、自分のスタジオでは同じことをしたくありませんでした。

先生が知っていることを見せる場所ではなく、生徒が分かるところまで持っていく場所にしたかったんです。

だから、先生側にも勉強してもらっています。

踊れれば教えられるとは考えていません。

バレエの技術だけでなく、教授法や身体のことも知らなければいけない。

そして、自分が知らないことを知らないまま教えない。

これは結構大事だと思っています。

先生になると、生徒からは「先生だから知っている」と思われます。

でも実際は、先生だって知らないことはたくさんあります。

私も知らないことはあります。

だったら調べればいい。

分からないのに、それっぽい言葉で教えてしまうほうが問題です。

基礎を地味だと思う人には、たぶん合わない

大人バレエアカデミー™は、誰にでも合うスタジオではないと思います。

私はそれでいいと思っています。

とにかく難しい振付をたくさんやりたい。

毎回たくさん踊った気分になりたい。

基礎をやるより、できなくても難しいことに挑戦したい。

そういう人には、他のスタジオのほうが楽しいかもしれません。

こちらでは、必要ならずっと基礎をやります。

なぜなら、そのほうが早いからです。

私は、「基礎をやるのは初心者だから」だとは考えていません。

上達したいから基礎をやります。

むしろ上手くなればなるほど基礎の重要性は分かるはずです。

自分ができないことに対して、ただ回数を増やすのではなく、一度原因を考える。

その原因がもっと簡単な動きの中にあるなら、そこまで戻る。

私は、それを面倒くさいと思わない人に来てもらいたい。

以前から「頭のいい人が来るスタジオにしたい」と思っていました。

別に勉強ができる人という意味ではありません。

何が一番目的に対して効率がいいのかを考えられる人です。

ピルエットができないからピルエットを100回練習するより、そもそも片脚で立てていないと分かったら、まずそこをやる。

脚を高く上げたいけれど、骨盤が全部ついてきているなら、一度低い位置まで戻す。

難しいことをやっているほうが頑張っているように見えるけれど、本当に早く上達したいなら、一度戻ったほうがいいことがあります。

その判断ができる人は強いです。

基礎は地味です。

でも、地味なことと効果がないことは全然違います。

むしろ地味だからこそ、みんな飛ばしたがる。

だから差がつくんだと思います。

自分が分からなかったことを、分からないまま次の人に渡さない

私はバレエを学ぶ環境にはかなり恵まれていました。

アメリカに留学して、大学で勉強して、毎日のようにバレエができて、バレエ団にも入りました。

しかも、その多くを自分で毎回レッスン代を払わずに学ぶことができました。

そんな環境にいても、私は先生の言っていることが分からなくて困りました。

だから自分で身体を勉強しました。

そのあとトレーナーになって、バレエをやっている人を見るようになったら、同じようなことがたくさん起きていました。

本人は真面目に習っている。

でも何をすればいいのかは分かっていない。

先生も、その先を説明できるとは限らない。

身体の使い方をトレーニングで教えても、それをバレエで試せる場所がない。

先生と連携したくても、連絡すら取れない。

それなら、身体の使い方を知るところから、実際のバレエで使えるようになるところまで、全部つながった場所を作るしかないと思いました。

それが大人バレエアカデミー™です。

私は、バレエは上達することが一番楽しいと思っています。

だから上達できる場所にしたかった。

そして、大人が限られた時間の中で上達するなら、基礎をきちんとやるのが一番早いと思っています。

ただ基礎の動きを繰り返すのではなく、何をやっているのか分かるように教える。

自分が昔、「先生の言っていることが分からない」と困ったことを、そのまま次の人に渡さない。

分からないなら説明する。

説明しても伝わらないなら、別の方法を考える。

先生自身が知らないなら勉強する。

そのうえで、プリエやタンデュのような地味なところをきちんとやる。

派手ではありません。

でも、上手くなりたいなら、そのほうが早い。

大人バレエアカデミー™は、そういう考えで作ったスタジオです。

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