こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

バレエを習い始めてしばらくすると、上のクラスが気になってきます。
入門の次は初級、初級の次は中級。
クラスの名前が変わると、自分が上達した証拠をもらえたような気がするでしょう。

ところが、教室を見渡してみると、ずいぶん上手な人が入門や基礎のクラスにも出ていたりします。
上のクラスでは回転もジャンプもきれいにこなしている人が、なぜか一番やさしいクラスのバーで、黙々とプリエをしている。

「あの人なら、もう出なくてもいいのに」と思ったことはありませんか?

反対に、自分が少し慣れてきたころに基礎のクラスへ出ると、どこか物足りなく感じることもあるでしょう。
順番は覚えているし、音楽もゆっくりだし、知っている動きばかりで新しいことがない。
だから、早く上のクラスに移りたくなる。

この二つの感じ方の違いは、上手かどうかの差だけではありません。
同じ基礎のクラスに出ていても、そこで何をしているかが違います。

上のクラスに出ることだけを上達だと考えていると、基礎のクラスは「卒業するところ」になります。
でも、上手な人にとっての基礎のクラスは、卒業した場所ではなく、今も使っている場所です。

プロのダンサーも、毎日バーのプリエから始めています

多くのバレエ団では、ダンサーはリハーサルや本番の前に、毎日クラスを受けています。
主役を踊る人も、入団したばかりの人も、同じようにバーについてプリエから始めます。

毎年秋には「ワールド・バレエ・デー」という、世界のバレエ団がレッスンやリハーサルの様子を配信する日があります。
今年は10月29日に行われ、英国ロイヤル・バレエがロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスから配信しました。
事前の発表では、その配信は、ダンサーたちが毎日受けているカンパニークラスの生中継から始まることになっていました。

今年の配信を見た方や、以前にこうした配信を見たことがある方は、意外に思ったかもしれません。
世界の舞台で踊っている人たちがやっているのは、私たちのクラスと同じタンデュやロン・ド・ジャンブです。

もちろん、プロは脚の高さも動きの速さも違います。
ただ、バーの順番やセンターの流れそのものは、大人のクラスと大きく変わりません。

なぜ、何千回もやってきたはずのプリエを、毎朝またやるのでしょうか。

忘れてしまうから、ではありません。
身体の状態は毎日違います。
前の日の公演の疲れが残っている日もあれば、床の感じ方がいつもと違う日もある。
いつもの動きをいつもの順番でやるからこそ、今日の自分がどうなっているかが分かります。

クラスの中では、主役を踊るダンサーでも先生から注意を受けます。
長く踊ってきた人でも、基本の動きの中に、自分では気づかないずれが出てきます。

配信でクラスを見ると、全員が同じ組み合わせを踊っています。
でも、一人ひとりが同じことを確かめているとは限りません。
例えば、前の日の公演で疲れた脚の様子を見ている人もいれば、その日のリハーサルで踊る役の方向の取り方を気にしている人もいるでしょう。
外から見ているだけでは、そこまでは分かりません。
プロにとってのクラスは、新しいことを覚える時間というより、同じ動きの中で、その日の自分に必要なことを確かめる時間です。
そこで確かめたものの上に、その日のリハーサルや舞台がのっています。

大人の生徒さんがプロと同じようにクラスを受ける必要はありません。
でも、上手な人ほど基礎に戻ってくる理由は、ここにあります。
基礎は最初に習うものであると同時に、毎回の自分を確かめるためのものでもあります。

上のクラスに出られることと、上達していることは別の話です

ここで少し立ち止まって、上のクラスで何が変わるのかを考えてみましょう。

上のクラスになると、パの種類が増えます。
音楽が速くなり、組み合わせが長くなり、方向の変化や回転、ジャンプも入ってきます。
覚えることも、同時に気をつけることも増えます。

つまり、上のクラスで練習しているのは、主に「組み合わせる力」と「速さについていく力」です。

これはこれで必要な練習です。
踊りは一つひとつの動きをつなげてできていますから、組み合わせて動けるようになることも上達の一部です。

ただ、その組み合わせの中に入っているのは、基礎のクラスでやっているのと同じプリエ、タンデュ、ルルベです。
一つひとつがあいまいなまま上のクラスに出ると、何とか順番についていくことに精一杯になります。

例えば、中級のクラスでピルエットの前のプリエが毎回浅くなる人がいたとします。
本人は回転のことで頭がいっぱいで、プリエに気づく余裕がありません。
先生に「プリエ」と言われても、次の回転ではまた回ることに意識がいってしまう。

これは、その人の努力が足りないのではありません。
上のクラスの速さと複雑さの中では、プリエだけを確かめる時間がありません。

上のクラスに上がった直後に、「前より下手になった気がする」という話をよく聞きます。
前のクラスではきれいにできていたタンデュが、上のクラスでは雑になる。
先生に直される回数が増えて、自分が下手になったように感じてしまう。

でも、多くの場合、本当に下手になったわけではありません。
気をつけることが増えたせいで、それまでタンデュに向けていた注意が、順番や速さに取られているだけです。
新しいクラスに慣れて、順番を考えずに動けるようになれば、またタンデュに注意を戻せるようになります。

ただ、慣れるまでの間に、雑なタンデュのまま繰り返してしまうと、それがそのまま身体に残ります。
上のクラスに上がったばかりの時期ほど、元のクラスで丁寧にやっていたことを、どこかで確かめ直す時間を作ってほしいところです。

以前、クラスレベルを上げるための目安の技術について書いたことがあります。
あれは、上のクラスで練習するために最低限必要なことの目安です。
目安を満たしたら基礎のクラスはもう要らない、という意味ではありません。

上のクラスに出られるのは、その組み合わせについていけるようになったということです。
一つひとつの動きの質が上がったかどうかは、また別に確かめる必要があります。
上手な人はそこを分けて考えているから、上のクラスと基礎のクラスの両方に出ています。

基礎のクラスは、気をつけることが少ないから確かめられる

では、基礎のクラスでは何ができるのでしょうか。

基礎のクラスの組み合わせは短く、音楽もゆっくりです。
次の動きを思い出すのに頭を使わなくていいし、方向もそれほど変わりません。

この「やさしさ」を、物足りなさとして受け取ることもできます。
でも、見方を変えると、気をつけなければいけないことが少ない分、ほかのことに注意を向ける余裕があるということです。

上のクラスで余裕がなかったプリエを、基礎のクラスならじっくり確かめられます。
膝を曲げていくとき、体重が足裏のどこにあるのか。
いちばん下で止まってしまっていないか。
伸ばしていくときに、曲げたときと同じ道を戻ってこられているか。

順番を覚えることに精一杯のときには、こういうところまで気が回りません。
基礎のクラスの順番が頭に入っている人だからこそ、空いた注意をそこへ使えます。

最初に書いた「物足りない」という感じ方は、順番も音楽も分かっていて、新しく覚えることがないところから来ているのでしょう。
上手な人は、その新しく覚えることがない時間を、確かめる時間として使っています。
同じクラスに同じ時間だけ出ていても、使い方が違えば、そこで練習できることは変わります。

センターに出てからも同じです。

基礎のクラスのセンターは、バーでやった動きを、手を離してもう一度やるくらいの短い組み合わせが多いでしょう。
上のクラスなら、すぐに次の動きへ進んでしまうところです。
でも、バーでできていたルルベが、手を離すとどう変わるかを確かめるには、このくらいの短さがちょうどいい。

両手でバーを持っていたときは、ルルベで身体がまっすぐ上に伸びていた。
手を離すと、上がる途中で少し前に倒れて、それを足先で支えようとしている。
そういうことに気づけるのは、ルルベだけに集中できる時間があるからです。

なお、ここでいう基礎のクラスは、教室によって入門、初級、基礎など名前が違います。
大事なのは名前ではなく、組み合わせが短くて、自分が順番に迷わずにいられるクラスかどうかです。

同じタンデュでも、見ているところが違う

具体的に、タンデュで考えてみます。

バレエを始めたばかりの頃は、タンデュを前に出して戻す、それだけで大変です。
脚をどこに出せばいいのか、つま先はどう伸ばすのか、何回やって次はどの方向なのか。
覚えることがたくさんあって、頭の中はほとんど順番のことでいっぱいになります。

それが少しずつ慣れてくると、順番は自然に出てくるようになります。
ここからが、基礎のクラスの使い方が分かれるところです。

例えば、ある人は脚を出すときに、支えている脚のかかとが浮きやすいことに気づいています。
その日のタンデュでは、脚の出し方より、支えている脚の床の踏み方を確かめることにする。

基礎のクラスの音楽はゆっくりなので、脚を出し始める前に、体重が支える脚に移っているかを感じる時間があります。
体重が移りきる前に脚を出すとかかとが落ち着かず、移ってから出すとかかとは床に残ったまま脚が出ていきます。
その違いが分かれば、上のクラスでピルエットの準備をするときにも、同じところを思い出せます。
回転のための特別な練習をしたわけではなく、タンデュで確かめたことが、回転の前の立ち方につながっていきます。

別の人は、自分がいつも音より少し早く脚を出してしまうことを先生に言われています。
その日は、音楽のどこで動き始めて、どこで脚が出きっているのかを確かめることにする。
脚の形はもう十分きれいでも、音に対して少しずつ早いだけで、踊り全体は急いでいるように見えてしまいます。
ゆっくりのタンデュで音の待ち方を覚えておくと、速い組み合わせになっても、自分で間を作れるようになっていきます。

外から見ると、二人とも同じタンデュをしています。
でも、練習していることはそれぞれ違います。

ここが難しいところですが、何を確かめるかは、自分の課題によって変わります。
誰かが確かめていることをそのまま真似しても、自分に必要なこととは限りません。

だから、上手な人は自分の課題をよく知っています。
回転でいつも同じ方向にずれる、ジャンプの着地で膝が内に入る、といった上のクラスでの困りごとを、基礎のクラスの一つひとつの動きまで戻して確かめています。

立ち方も音も方向も、基礎のクラスなら一つずつ確かめられる

タンデュやプリエそのものだけでなく、上手な人は、動きの前と後ろの時間も使っています。

バーの一つひとつの練習は、準備の姿勢から始まって、終わりの姿勢で終わります。
五番で立って、音楽の前奏を聴いて、腕を準備して動き始める。
最後は脚を閉じて、腕を下ろして、次の練習を待つ。

順番に慣れてくると、この部分はつい流してしまいがちです。
前奏の間に次の順番を思い出していたり、終わった瞬間に力を抜いてバーにもたれたりする。

でも、この準備と終わりの姿勢こそ、立ち方を確かめるのにちょうどいい時間です。
何も動いていないときに、五番でまっすぐ立てているか。
動き終わったときに、始める前と同じ立ち方に戻ってこられているか。

始める前と終わったあとで立ち方が変わっているなら、その間の動きのどこかで、何かが崩れています。
動いている最中には分からなかったことが、止まったときに分かったりします。

音の取り方も、ゆっくりの音楽の中のほうが見えてきます。

基礎のクラスの音楽はゆっくりで、拍もはっきりしています。
だからこそ、動き始めが拍のどこにあるのか、脚が出きるのはどこなのか、戻ってくるのはどこなのかを確かめやすい。
先ほどのタンデュの例のように、いつも音より早く動いている人は、ゆっくりの音楽の中でこそ、自分が待ちきれずに動き出していることに気づけます。

ただ、ゆっくりの音楽は、実は速い音楽よりごまかしがききません。
速い組み合わせなら勢いで通り過ぎてしまうところも、ゆっくりだと一つひとつの途中を見せることになります。
プリエで下りていく途中、タンデュで脚が床を離れていく途中に、支えがあいまいなところがあれば、そこで身体が揺れたり止まったりする。
基礎のクラスがやさしく見えるのは組み合わせが短いからで、一つひとつの動きまでやさしくなっているわけではありません。

方向も、基礎のクラスで確かめられることの一つです。

上のクラスでは、クロワゼ、エファセ、エカルテと方向が次々に変わります。
そのたびに身体の向きと顔の向き、腕の位置を合わせなければいけません。
基礎のクラスで方向が変わるところは少ないですが、その少ない場面で、身体の向きが先にそろっているか、顔が最後に遅れていないかを見ることができます。

例えば、クロワゼの前にタンデュを出すとき、脚は斜め前に出ているのに、肩と腰はまだ正面を向いたままになっている人がいます。
本人は方向を変えたつもりでも、変わっているのは脚だけです。
上のクラスでこれが起きると、次の動きに移ったときに身体の向きがさらにずれていきます。
基礎のクラスで一回ずつ方向を確かめておけば、上のクラスで方向が続けて変わっても、どこで合わせればいいかが分かるようになります。

立ち方も、音も、方向も、最初に習うことばかりです。
上手な人は、それを上のクラスに出るようになってからも確かめ続けています。

上手な人は、基礎のクラスで自分に課題を出している

基礎のクラスに出ている上手な人を見ていると、目立とうとしていないことに気づくと思います。

脚をほかの人より高く上げたり、回転を一回多く入れたりはしない。
クラスの組み合わせのとおりに、決められた高さと速さで動いている。

これは遠慮しているからではありません。
基礎のクラスで余計に高く上げたり多く回ったりすると、確かめるための余裕がなくなってしまうからです。
脚を高く上げることに力を使えば、支えている側の確認がおろそかになります。
回転を増やせば、プリエや立ち上がりより、回ることそのものに意識がいきます。

それでは、上のクラスと同じ状態を、わざわざ基礎のクラスで作ってしまうことになります。

上手な人は、動きを難しくする代わりに、自分の中で課題を細かくしています。
プリエのいちばん下で止まらないようにする日もあれば、タンデュを戻すときに出したときと同じ道を通れているかを見る日もある。

外からはほとんど分かりません。
でも、本人の中では、毎回のクラスに違うテーマがあります。

テーマを決めておくと、うまくいかなかったときにも、何がうまくいかなかったのかがはっきりします。
「今日はなんだかいまいちだった」で終わらずに、「プリエのいちばん下で、やっぱり一瞬止まってしまう」と分かれば、次に先生に聞くことも、次のクラスで試すことも決まります。

もう一つ、上手な人は、基礎のクラスで先生の説明をよく聞いています。

初心者向けの説明は、もう知っていることのように思えるかもしれません。
ところが、知っていると思っていたことを、もう一度言葉で聞くと、自分がそのとおりにやっていなかったことに気づく場合があります。

「膝はつま先と同じ方向に」と聞いて、自分の膝を見てみる。
長く習っている人ほど、そこで少しずれていることに気づいたりします。
最初に習ったときには分からなかった説明が、経験を積んでから聞くと、別の意味で分かる。
これも、基礎のクラスに出ている人が得ているものです。

ほかの人への注意も、上手な人は自分のこととして聞いています。

基礎のクラスでは、先生が始めたばかりの方に、立ち方や脚の出し方を丁寧に直していく場面が多くなります。
自分に言われたわけではないので、その間は休んでいてもいい時間に見えるかもしれません。
でも、「お尻を後ろに引かないで」と誰かが直されているのを聞いたら、自分のプリエでも同じことが起きていないかを確かめられます。
始めたばかりの方が受ける注意は、長く習っている人にも残りやすい癖と重なっていることが多いからです。

上のクラスでは、先生が一人ひとりに丁寧に説明する時間は短くなります。
基礎のクラスで聞ける説明は、上のクラスではもう言ってもらえないことでもあります。

それから、上手な人が基礎のクラスにいることは、周りの人にとっても意味があります。

始めたばかりの方は、上のクラスの上手な人の踊りを見ても、何がどう上手なのか分からないことが多いでしょう。
回転やジャンプは、すごいとしか感じられません。
でも、同じクラスで同じタンデュをしている人なら、自分との違いを見つけやすくなります。
脚を出すときに上半身が動いていない、終わったあとの立ち方がきれいなまま。
そういう違いは、同じ動きをしているからこそ見えてきます。

ただし、上手な人を見て形だけ真似をすればいいということではありません。
見て気づいたことを、自分の身体で確かめるところまでやって、初めて練習になります。

基礎のクラスに戻るのは、後退ではありません

それでも、上のクラスに出られるようになってから基礎のクラスに戻るのは、少し抵抗があるかもしれません。

周りは始めたばかりの方が多くて、自分だけ浮いているような気がする。
先生や知り合いに「どうして下のクラスに?」と思われないか、気になったりしませんか?
せっかく上がったのに、戻ったら上達が止まってしまうのではないか、と心配する方もいるでしょう。

そう感じる方の気持ちも分かります。
特に大人は、クラスのレベルを自分の頑張りの成果として受け取りやすいので、下のクラスに出ることを「下がる」と感じやすくなります。

ただ、基礎のクラスに出ることは、上のクラスで練習していることを捨てることではありません。

上のクラスで動きをつなげることや速さについていくことを練習し、基礎のクラスでその中に入っている一つひとつの動きを確かめる。
役割が違うので、両方に出ることに意味があります。

むしろ心配なのは、上のクラスにだけ出ていて、自分の動きがどうなっているかを確かめる時間が一度もないことです。
順番についていけているから問題ないと思っていても、プリエやタンデュの癖は、そのまま速い組み合わせの中に持ち込まれています。
それが回転やジャンプのつまずきとして出てきたとき、どこに戻ればいいのかが分からなくなってしまいます。

では、どんなときに基礎のクラスに出るとよいのでしょうか。

例えば、上のクラスで同じ注意を何度も言われていたり、回転やジャンプでいつも同じところでつまずいていたりするなら、上のクラスで何度も繰り返すより、一度基礎のクラスでその動きの元になっているところを確かめたほうが、原因に近づきやすくなります。
しばらくレッスンを休んでいて、久しぶりに戻ってくるときも、基礎のクラスから始めると今の身体の状態が分かりやすくなります。
ケガや体調のことで休んでいた場合は、どこまで動いてよいかを医師に確認したうえで、ゆっくりのクラスから少しずつ戻していってください。

通える回数が限られている方もいるでしょう。
例えば週に二回通えるなら一回は基礎のクラスにする、週に一回なら月に一度くらい基礎のクラスの週を作る、というやり方もあります。
どれが正しいということはありませんが、上のクラスだけ、基礎のクラスだけ、と決めてしまわずに、自分の課題に合わせて組み合わせを考えることはできます。

先生に「上のクラスで言われたプリエを確かめたいので、基礎のクラスにも出ます」と伝えておくのもいいでしょう。
先生にとっても、その人が基礎のクラスで何を確かめようとしているかが分かれば、見るところをしぼって声をかけやすくなります。

基礎の大切さについては、これまでにもバレエで基礎をやらないとどれだけ損をするのかなどで書いてきました。
ただ、基礎は一度済ませたら終わりのものではなく、上達してからも使い続けるものです。

基礎のクラスに出ている自分を、周りがどう思うかは、自分ではどうにもできません。
でも、そこで何を確かめるかは、自分で決められます。

基礎のクラスが退屈に感じるときは、確かめることを探している途中

ここまで読んで、「そうは言っても、基礎のクラスはやっぱり退屈に感じる」という方もいるでしょう。

それは、おかしなことではありません。
何を確かめればいいのかが分からないうちは、同じ動きの繰り返しにしか感じられないのが普通です。

上手な人が基礎のクラスを面白がっていられるのは、自分の動きの違いに気づけるからです。
今日は昨日よりかかとが落ち着いている、今日は音の取り方が少し早い。
そういう小さな違いが分かると、同じタンデュでも毎回同じではなくなります。

最初からそこまで気づける人はいません。
違いに気づく力も、レッスンを重ねる中で少しずつ育っていくものです。

例えば、膝を伸ばすことを考えてみます。
始めたばかりの頃は、膝が伸びているか曲がっているか、その二つしか分からないでしょう。
慣れてくると、伸びているつもりでも少し緩んでいる瞬間があることに気づく。
さらに進むと、脚を出しきる前に伸ばしているのか、出しきってから伸ばしているのか、そのタイミングまで分かるようになります。

同じ「膝を伸ばす」でも、気づけることが増えるほど、確かめることも細かくなっていきます。
基礎のクラスの中身は変わらなくても、そこで練習できることは、本人が上達するにつれて増えていきます。
上手な人は、上手くなったから基礎が要らなくなったのではなく、上手くなった分だけ、基礎の中に見えるものが増えています。

だから、基礎のクラスが退屈に感じるのは、上手くなっていないからではなく、まだ確かめる場所を探している途中なのかもしれません。

そういうときは、先生に聞いてみるのも一つの方法です。
「この動きのとき、私はどこを気をつければいいですか」と聞けば、その人の課題に合わせた確かめ方を教えてもらえるはずです。
基礎のクラスで何を見ればいいかを示すのは、教える側の仕事でもあります。

また、上のクラスで言われた注意を、基礎のクラスに持ってくることもできます。
上のクラスでピルエットの前のプリエを注意されたなら、次の基礎のクラスではバーのプリエでそこを確かめる。
上のクラスでうまくいかなかったことが、基礎のクラスの練習の材料になります。

上のクラスで困ったことを基礎のクラスで確かめて、また上のクラスで試す。
この行き来ができるようになると、基礎のクラスは物足りない場所ではなくなります。

一つ気をつけたいのは、慣れた基礎のクラスほど、考えずに動けてしまうことです。

順番が身体に入っているのは、確かめる余裕を作るうえでは助けになります。
一方で、何も考えなくても最後まで終わってしまうので、気づいたらレッスンが終わっていた、ということにもなりやすい。
長く同じクラスに出ている人ほど、自分では気をつけているつもりで、いつもの癖のまま動いている時間が増えていきます。

基礎のクラスに出ているのに変化を感じないなら、出ている回数より先に、確かめることを決めてからクラスに入っているかを振り返ってみたほうがいいでしょう。

上手な人がやっていることを、いきなり全部真似する必要はありません。
始めるのは、一つで十分です。

次に基礎のクラスに出るときは、レッスンの前に「今日はこれだけ確かめる」というものを一つ決めてみてください。

例えば、プリエで膝を曲げていくときと伸ばしていくときの速さが同じかどうか、タンデュを音楽のどこで出し始めているか、といったことです。
自分がよく言われる注意があるなら、それが一番の候補です。

決めたら、クラスの間は、そのことを一つの動きだけでなく、できるだけいろいろな動きの中で確かめてみます。
全部の動きでできなくても構いません。
「タンデュではできたけれど、バットマン・ジュテになると分からなくなった」というところまで分かれば、それが次の課題になります。

レッスンが終わったら、何に気づいたかを一言だけでもメモしておくと、次のクラスにつなげやすくなります。

上のクラスに出ている方は、上のクラスで言われた注意を一つ持って、次の基礎のクラスに出てみてください。

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