こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
大人になってから、バレエを始める男性もいます。
体を動かすのが好きな方、ほかのスポーツから来た方、お子さんの影響で始めた方。
きっかけはさまざまです。
男性がバレエを始めるとき、気になることのひとつがケガかもしれません。
ジャンプやリフトのイメージから、男性のほうがケガをしやすそうだと感じる方もいるでしょう。
反対に、男性は力があるから大丈夫だと考える方もいるかもしれません。
実際のところは、どうなのでしょうか。
男女のダンサーのケガを比べた研究
2026年、ダンス医学の専門誌『Journal of Dance Medicine & Science』に、男性と女性のバレエダンサーのケガを比べた論文が掲載されました。
2000年から2025年までに発表された11の研究をまとめ、合わせて1,650人のデータを分析したものです。
対象は、プロのダンサーと、プロを目指して学ぶダンサーです。
調べたのは、使いすぎによるケガです。
一度の転倒や衝突ではなく、同じ動きをくり返すうちに少しずつ起きるケガを指します。
男女で、はっきりした差は見られなかった
結果は、男女でケガの起こりやすさに統計的な差はない、というものでした。
ケガの起きやすさも、ケガをした人の割合も、ケガの起きる場所も、男女で差は見られませんでした。
男性も女性も、もっとも多かったのは足と足首のケガです。
上半身のケガは、男性にやや多い傾向がありました。
ただし、これも統計的な差とまでは言えないものでした。
ただし、まだ「確か」とは言えない
この論文には、大切な注意点があります。
著者たち自身が、結果の確かさを「非常に低い」と評価しているのです。
もとになった研究はすべて観察研究で、11の研究のうち5つには年齢の記載がありませんでした。
男女で練習量がどれくらい違うのかも、分けて調べられていません。
ケガの重さについては、調べた研究が2つしかなく、結果も食い違っていたため、まとめて分析されていませんでした。
また、対象はプロやプロを目指すダンサーです。
大人になってから趣味で始めた方に、そのまま当てはまるとは限りません。
この研究から言えるのは、「今のところ、男女で差は見つかっていない」というところまでです。
男性の生徒さんに意識してほしい3つのこと
ここから先は、研究ではなく、私がレッスンで伝えていることです。
足と足首のケアは、男性も同じように大切
男女ともに、もっとも多かったのは足と足首のケガでした。
ルルヴェやジャンプで使う足首まわりは、男性にとっても要の場所です。
レッスンの前には、足首をゆっくり回したり、足の指を動かしたりして、準備をしてから始めましょう。
力に自信があっても、使いすぎには注意
ほかのスポーツで鍛えてきた方は、筋力に自信があるかもしれません。
けれど、使いすぎによるケガは、力の強さとは別に、同じ動きのくり返しから起きるものです。
最初からすべての動きを全力で行うのではなく、回数や強さを少しずつ増やしていってください。
上半身の使い方にも目を向ける
統計的な差ではないものの、上半身のケガは男性にやや多い傾向がありました。
大人のレッスンでリフトを行うことは多くありません。
それでも、腕を長く保つポール・ド・ブラでは、肩や首に力が入りすぎることがあります。
肩を下げ、背中から腕を支える意識を持ってみてください。
痛みを感じたら、早めに相談を
使いすぎによるケガは、小さな違和感から始まりがちです。
「このくらいなら大丈夫」と我慢を続けると、長引いてしまうことがあります。
痛みが続くときは無理をせず、早めに医療機関に相談してください。
レッスン中に気になることがあれば、遠慮なく講師に声をかけましょう。
次のレッスンは、足首の準備から
男性も女性も、ケガをせずに長く踊り続けるための基本は同じです。
次のレッスンでは、始まる前の数分間を、足首と足の指の準備に使ってみてください。
足首をゆっくり回し、足の指をグーとパーに動かすだけでも、身体は踊る準備を始めます。
参考文献
Rupendran R, Wadud AA, Davis RE, Taglia SG, Rusby TA, Angioi M. Prevalence, Incidence, Severity, and Anatomical Location of Overuse Injuries in Male and Female Ballet Dancers: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Dance Medicine & Science. 2026.
https://doi.org/10.1177/1089313X251412479




