こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

最近、レッスンをしていると、バレエを始めてそれほど長くない方でも、身体についてかなり詳しいことがあります。

「ターンアウトは股関節からするんですよね」

「腸腰筋を使って脚を上げるんですよね」

「肋骨が開かないようにしたほうがいいんですよね」

「ピルエットでは軸脚で床を押すと見ました」

こういう話が、ごく普通に出てくるようになりました。

InstagramやYouTubeなどで、バレエについて解説している動画が増えた影響はかなり大きいと思います。

以前なら、バレエについて何か知りたければ、レッスンで先生に聞くか、本を読むくらいしかありませんでした。

今はスマートフォンを開くだけで、海外の先生のレッスンまで見ることができます。プロのダンサーが普段行っているトレーニングや、解剖学を使った身体の説明も簡単に見つかります。

私自身、そういう動画を見ることがあります。

説明の仕方が分かりやすいと思うこともありますし、自分とは違う考え方を知ることもあります。ですから、SNSでバレエについて勉強すること自体を否定するつもりはありません。

ただ、レッスンをしていると、以前にはあまり見なかったことも起こるようになりました。

いろいろなことを知っているのに、その知識が増えたことで、かえって身体が動かなくなっている人がいるのです。

「正しいこと」を増やしたら、タンデュが動かなくなった

先日、タンデュをしている生徒さんを見ていて、少し気になることがありました。

以前はもっと普通に脚が出ていたのに、その日は一回のタンデュをするたびに、どこか慎重になっていました。

脚を出す前に少し考え、出している途中でも身体のどこかを確認しているように見えます。音楽の中で動いているというより、一つの動作を細かく点検しながら進めている感じでした。

何を意識しているのか聞いてみると、

「最近動画をいろいろ見ていて、内腿を使って、踵を前にして、骨盤を動かさないようにして、床を押して、最後までつま先を使うようにしています」

という話でした。

内容だけを聞けば、特別おかしなことを言っているわけではありません。

ただ、それを全部一回のタンデュの中でやろうとしていました。

頭の中では、脚を出しながら次々に確認しているわけです。内腿が使えているか、踵は前に向いているか、骨盤は動いていないか、足先まで使えているか。そこまで考え続けていたら、音楽に合わせて自然に脚を出す余裕はなくなります。

そこで、その日は一度ほとんど忘れてもらいました。

全部を直そうとしなくていいので、まず膝を伸ばしたまま床を擦ってみてください、とだけ伝えました。

しばらく繰り返していると、止まりながら動いていたタンデュが少しずつ戻ってきました。

このとき、本人が見た動画が間違っていたわけではありません。

むしろ、正しくやりたいと思ったからこそ調べたのだと思います。

それでも、動きにくくなりました。

バレエでは、ここが少し難しいところです。

正しい情報を知ったことと、その情報を今の自分の身体に使ったほうがいいことは、必ずしも同じではありません。

正しいことを全部やろうとすると、身体が固まることがある

バレエを習っていると、いろいろな注意を聞きます。

お腹を引き上げる、肩を上げない、首を長く見せる、肋骨を開きすぎない、骨盤を保つ、膝や足先を伸ばす、ターンアウトをする。

どれも、その言葉が必要になる場面はあります。

ところが、それを全部「正しい姿勢を作るための条件」だと思ってしまうと、身体がかなり固くなることがあります。

以前、バーの前に立っただけで全身に力が入っている方がいました。

肩を上げないように強く下へ押していて、お腹もかなり固めています。胸の動きもほとんどなく、そのままプリエをすると、身体全体を固定して膝だけ曲げているように見えました。

そこで少し力を抜いてもらおうとすると、

「でも、力を抜いたら引き上げがなくなりませんか?」

と聞かれました。

その方は、引き上げについてかなり調べていました。肋骨や肩甲骨のことも知っていますし、姿勢についての動画もたくさん見ていました。

知らないから固まっていたのではありません。

知っていることを全部守ろうとしていたから、動くための余裕がなくなっていました。

そのときは、肩を下へ押し続けることを一度やめてもらいました。

「肩を上げてください」と言ったわけではありません。

腕を動かしても肩が上がらないようにと強く押さえ続けていたので、その力だけ少し減らしてもらいました。

すると腕の動きが変わり、胸のあたりにも動きが戻ってきました。プリエも、最初よりずっと自然になりました。

ここで分かってほしいのは、「肩を下げる」という注意が間違っているわけではないということです。

腕を上げるたびに肩まで一緒に上がる人なら、肩について注意することがあります。

でも、すでに必要以上に下へ押している人に同じ言葉をかけたら、さらに動けなくなります。

バレエの指導では、言葉だけを取り出して正しいか間違っているかを判断できないことがあります。

誰に対して、どんな状態のときに使った言葉なのかまで見ないと、本当の意味が分からないからです。

先生によって言うことが違って見える理由

SNSを見るようになってから、

「先生によって言っていることが違うんですが、どちらが正しいんでしょうか」

と聞かれることも増えました。

たとえば、普段のレッスンでは「もう少し前に乗ってください」と言われたのに、別の先生の動画では「前に乗りすぎないように」と説明していた。

言葉だけ比べれば、反対のことを言っています。

でも、実際のレッスンでは、こういうことは珍しくありません。

私も同じクラスの中で、ある人には「もう少し前へ」と言い、その少し後に別の方には「前に行きすぎています」と伝えることがあります。

一人目は踵側に重心が残りすぎていて、もう一人は前へ行きすぎて指に体重が集まっている。

目指している立ち位置そのものは、それほど違いません。

今いる場所が違うので、そこから修正する方向が変わっているだけです。

東京駅へ行く人に道を説明するとしても、新宿にいる人と千葉にいる人では案内する方向が違います。同じ目的地を目指しているからといって、全員に同じ方向へ進んでもらうわけにはいきません。

身体の指導にも、これと似たところがあります。

SNSの動画で「肩を下げすぎないでください」と説明している先生がいたとして、その先生が想定しているのは、肩甲骨を必要以上に下へ押し込んでいる人かもしれません。

別の先生が「肩を下げて」と言っているのは、腕を上げたときに肩まで大きく上がってしまう人に向けた説明かもしれません。

動画だけを見ると、その背景までは分かりません。

だから、違う言葉を見つけるたびに「どちらの先生が正しいのか」と考えていると、だんだん分からなくなってしまいます。

ターンアウトは、見た目だけを真似すると無理が出やすい

SNSの情報をそのまま真似しないほうがいい例として、ターンアウトはとても分かりやすいと思います。

一番ポジションで両足がきれいに180度開いている写真を見ると、いかにもバレエらしく見えます。

大人からバレエを始めた方でも、

「いつかもっと開けるようになりたい」

と思うことはあるでしょう。

ただ、ターンアウトは、足先が何度開いているかだけでは判断できません。

レッスンで一番ポジションに立ってもらうと、かなり頑張って足先を外へ向けている方がいます。

立っているだけなら、よく開いているように見えます。

ところが、そこからプリエをしてもらうと、膝が足先とは違う方向へ入ってしまう。タンデュをすると軸脚の土踏まずが落ち、片脚になった途端に身体が安定しなくなることもあります。

こういう場合、私は一度足の角度を少し戻してもらいます。

すると、

「でも、バレエならもっと開かないといけませんよね」

と言われることがあります。

もちろん、練習を続けるうちに使えるターンアウトが広がっていくことはあります。

ただ、今その人の股関節で使える範囲を超えて足先だけを外へ向けても、その角度を動きの中で保つことはできません。

一番ポジションで立っている写真だけなら、以前より「正しい形」に近づいたように見えるでしょう。

けれど、そのままプリエやタンデュができないのであれば、実際のバレエの中では使いにくい。

私はターンアウトを見るとき、一番ポジションの角度だけを見ることはありません。

そこから動いたときに何が起こるかまで見ます。

SNSで流れてくる写真や短い動画では、この部分はなかなか分かりません。

脚が上がらないからといって、もっと柔らかくすればいいとは限らない

ストレッチの動画もよく見かけます。

前後開脚をしていたり、180度以上脚を開いていたり、壁を使って脚を高く上げていたり。

バレエをやっていれば、柔らかくなりたいと思うのは普通だと思います。

以前、もっと脚を高く上げたいという方がいました。

床でストレッチをするとかなり柔らかく、前後開脚も十分にできています。

それでも本人は、

「身体が硬いから脚が上がらないんです」

と思っていました。

SNSでプロのダンサーが行っているストレッチを見て、さらに柔らかくしようとしていたそうです。

ところが、実際に立ってデヴェロッペをしてもらうと、私が気になったのは柔軟性ではありませんでした。

脚が上がってくる途中で、軸脚側の身体が崩れていました。

脚をそこまで動かせる可動域はあるのに、その位置で身体を支えられない。

そうであれば、さらに開脚を深くするより、今持っている可動域を立った状態で使えるようにしたほうがいい。

そこでしばらく、脚を高く上げることをやめました。

低い位置で骨盤や軸脚を保ちながら動かす練習をしました。

本人からすれば、脚を高く上げたいのに45度くらいで練習しているので、少し物足りなかったかもしれません。

でも、その練習を続けるうちに、以前より高い位置まで上げても身体が崩れにくくなってきました。

新しく柔らかくなったわけではありません。

もともと持っていた可動域を、踊る中で使えるようになってきたということです。

SNSで「脚を高く上げるためのストレッチ」という動画を見れば、脚を上げたい人は自分に必要な練習だと思うでしょう。

でも、脚が上がらない理由が本当に柔軟性なのかは、実際の動きを見なければ分かりません。

「ピルエットが回れない原因はこれ」を、そのまま自分に当てはめない

ピルエットについても同じです。

「回れない人は体幹が弱い」

「スポットができていない」

「プリエが浅い」

SNSには、いろいろな説明があります。

どれも、誰かにとっては原因になるでしょう。

ただ、同じように一回転できない人でも、実際に身体の中で起きていることはかなり違います。

以前、ピルエットがなかなか一回転できない方がいました。

本人は、

「体幹が弱いと思うんです」

と言って、家でも腹筋のトレーニングをしていました。

実際に回ってもらうと、確かに回転の途中で身体は大きく傾いています。

でも、何回か見ていると、回ってから崩れているというより、もっと前の段階ですでに軸から外れていました。

プレパレーションのプリエで重心が後ろに残り、その状態から片脚に立とうとするので、立ち上がった瞬間に身体が軸を探しにいきます。

本人からすると、「回ったら傾いた」と感じていたと思います。

実際には、回転が始まる前から問題が起きていました。

その日は、あまり回りませんでした。

プリエからパッセに立つところを見直し、回転を加えずに安定して立てるところからやり直しました。そこが少し整ってから、四分の一回転、半回転と少しずつ増やしていきました。

この方に対して、ひたすら体幹トレーニングを増やしても、私がそのとき見ていた問題はあまり変わりません。

体幹が必要ないという話ではなく、その人が今直したほうがいいところが別にあったということです。

短い動画では一つの原因に絞って説明したほうが分かりやすいでしょう。

でも、それを見た側が「自分もこれだ」とすぐに決めてしまうと、実際には違うところを何か月も練習してしまうことがあります。

正しい姿勢を作ることに一生懸命になりすぎない

大人の方を教えていて、よく感じることがあります。

正しい姿勢をかなり真面目に作ろうとしている人ほど、動き始めたときに苦しくなっていることがあります。

鏡の前に立ち、お腹を引き上げ、肋骨が出ないようにして、肩を下げ、顎の位置を整える。

一つずつ確認して、ようやく動き始めます。

ところが、そこまでして作った姿勢を崩したくないので、プリエをしても上半身がほとんど動きません。ポール・ド・ブラでも腕だけが肩関節から動き、背中とのつながりが見えなくなっています。

「もう少し普通に立ってみましょう」

と伝えると、不安そうな顔をされることがあります。

せっかく作った正しい姿勢を崩したら、間違ったバレエになってしまうと思うのだと思います。

でも、バレエの姿勢は、動かないために作るものではありません。

プリエをすれば関節は動きますし、腕を上げれば肩甲骨も動きます。身体の向きを変えれば、背中の状態も少しずつ変わります。

「骨盤を動かさない」「肋骨を開かない」「肩を上げない」という注意だけを切り取って覚えると、何も動かさないことが正しいように感じることがあります。

実際の身体では、必要以上に動いてしまうことを抑えるのと、一切動かないように固めることは違います。

この違いを短い言葉だけで理解しようとすると、かえって難しくなることがあります。

先生は、見つけた間違いを全部その場で直しているわけではない

レッスンで一人の人を見れば、直したいところはいくつも見えます。

膝が少し緩んでいる、肩が上がる、軸脚の足裏が崩れる、腕の位置が少し違う。

さらに顔の方向や足先まで見れば、いくらでも注意することは出てきます。

だからといって、全部その場で言うわけではありません。

これは生徒さん側から見ると、少し分かりにくいかもしれません。

先生から何も言われなかったので、その部分は正しくできていたと思うこともあるでしょう。

もちろん、本当に問題がなければ言わないこともあります。

ただ、見えていても、今はそこを触らないほうがいいと考えて言わないこともあります。

たとえば、バレエを始めたばかりの方がセンターで動いていて、順番についていくことだけで精一杯だったとします。

右なのか左なのかを考えながら先生を見て、さらに音楽にも遅れないように動いている。

そこで腕や顔、足先、ターンアウトまで一度に直そうとしたら、ほとんどの人は止まってしまいます。

そういうときは、まず最後まで動くことを優先する場合があります。

腕について細かく言うのは、その人が順番に少し余裕を持てるようになってからでも遅くありません。

顔の方向も、最初から完璧につける必要はないことがあります。

教える側では、今この人に何を言えば次へ進みやすいかを考えます。

何でも正しいことをたくさん伝えればいいわけではありません。

SNSで「正しいタンデュ」を説明するなら、タンデュで気をつけることをいろいろ紹介するでしょう。

それを見た人は、全部を今の自分が直さなければならないと思うかもしれません。

でも、レッスンで先生から一つしか注意されていないなら、今はその一つに集中したほうがいい場合もあります。

プロのダンサーが話す感覚には、その前に積み重ねてきたものがある

プロのダンサーが、自分が踊るときに意識していることを話している動画もあります。

こういう動画は面白いですし、私も見ることがあります。

ただ、その言葉を大人から始めたばかりの人がそのまま持ってきても、同じ結果になるとは限りません。

たとえばプロのダンサーが、

「ピルエットではスポットを大事にしています」

と言ったとします。

それを見て、スポットができれば回れるようになると思う人もいるでしょう。

でも、そのダンサーはすでにルルベで片脚に立てます。

パッセにも入れますし、プリエから軸へ移動することや、腕の使い方、ターンアウトなども長い時間をかけて身につけています。

本人にとって当たり前になっていることは、動画の中でいちいち説明しません。

そういう基礎が身体に入っている状態で、

「私はスポットを意識しています」

と話しています。

そこだけを抜き出して初心者が真似しても、同じピルエットになるわけではありません。

ジャンプでも似たことがあります。

上手なダンサーが「床を押す感覚が大事」と話したとしても、ただ強く蹴ればいいという話ではありません。

プリエの使い方や足裏、膝と足先の方向、着地まで、すでに身体の中にあるものが違います。

上手な人が話していることが間違っているのではなく、そこへ至るまでの前提がかなり違うのです。

SNSでは、その人がそこまで来るのにかかった時間が見えない

SNSには、完成した瞬間がたくさん流れてきます。

脚が高く上がっている動画や何回転もするピルエット、深い前後開脚、美しいポール・ド・ブラ。

見る側は、それを数秒で見ます。

でも、その数秒の後ろにどれだけの時間があるのかは分かりません。

子どもの頃から毎日のようにレッスンしてきた人かもしれませんし、同じタンデュを何年も繰り返してきた人かもしれません。

一つのピルエットが安定するまで、何度失敗したのかも映りません。

出来上がったところだけを見ると、その人が紹介している方法を使えば、自分も同じところへ早く行けるような気がすることがあります。

大人の方を教えていると、

「これを意識したら、どれくらいでできるようになりますか」

と聞かれることがあります。

気持ちは分かります。

でも、バレエでは答えにくい質問です。

一度説明しただけで、その場では急に変わることもあります。

ところが、翌週になるとまた元に戻っている。

そこでまた同じことを練習します。

何回か繰り返しているうちに、自分で少し気づけるようになり、さらに時間が経つと、先生が何も言わなくてもできるようになってくる。

こういう変化には時間がかかります。

大人のバレエの上達は、毎回目に見えて一段ずつ上がっていくようなものではありません。

少しできるようになった後、またできなくなることもあります。

新しいことを覚えたら、以前できていたところが一時的に崩れることもあります。

それでも続けているうちに、少しずつ身体に残るようになります。

SNSの短い動画だけを見ていると、この時間が抜け落ちます。

新しい方法を探すより、前に言われたことを繰り返したほうがいいこともある

SNSを見ていると、新しい情報が毎日のように出てきます。

ターンアウトのトレーニングを見た翌日に、今度は足裏についての動画が流れてくる。その次には腸腰筋や肩甲骨についての解説が出てきます。

見ていると、どれも自分に必要なような気がしてきます。

ところが、実際のレッスンでは、新しいことを増やすより、しばらく同じことを続けたほうがいい人がたくさんいます。

たとえばタンデュで膝が曲がる方に、

「膝を伸ばしたまま出してみましょう」

と伝えます。

その場では少しできるようになった。

翌週また見てみると、同じところで膝が曲がる。

このとき、別の新しい方法を探さなければならないとは限りません。

もう一度同じことを練習します。

本人からすると、「また同じことを注意された」と感じるでしょう。

でも、それを何度か続けているうちに、以前ほど言わなくても伸びるようになります。

そこまで来たら、初めて別のところを見る余裕が出てきます。

こういう上達は地味です。

一回で劇的に変わるわけではありません。

ただ、大人の方を長く見ていると、身体が変わっていくのはむしろこういう時間のほうが多いと思います。

身体について詳しいことと、自分の身体が分かることは同じではない

SNSで身体について調べていると、筋肉や関節の名前にも詳しくなります。

腸腰筋、内転筋、中殿筋、肩甲骨、骨盤。

そういう知識を持つことは悪くありません。

先生から言われたことを理解する助けになることもあります。

ただ、「腸腰筋で脚を上げる」と説明できることと、自分がデヴェロッペをしたときに実際にどう身体を使っているかは別です。

「内腿を使う」という言葉を知っていても、それを意識しすぎて脚全体を締め、動きにくくなっている人もいます。

身体は、自分が思っている通りに動いているとは限りません。

「かなり膝を伸ばしているつもりです」

と言われて見てみると、本人の感覚より少し曲がっていることがあります。

反対に、

「私は全然ターンアウトできないんです」

と言う方でも、その人の身体としては十分に使えていることがあります。

自分の身体なのだから、自分が一番分かっていると思うかもしれません。

でも、踊っている最中の自分を外から見ることはできません。

感覚と実際の動きがずれていることはよくあります。

ここに、実際に人から見てもらう意味があります。

「私は身体が硬い」「体幹が弱い」と決めつけないほうがいい

レッスンをしていると、

「私は身体が硬いので」

「筋力がないんです」

「体幹が弱いんです」

という話をよく聞きます。

本人は、自分ができない理由を説明しているつもりだと思います。

でも、実際に動きを見てみると、そこが中心の問題ではないことがあります。

先ほどの脚を高く上げたい方は、自分では身体が硬いと思っていました。

実際には柔軟性はかなりありました。

ピルエットの方は体幹を気にしていましたが、そのとき私が先に見たのは、プリエから立ち上がるときの重心でした。

SNSで「こういう人は体幹が弱い」という動画を見ると、自分もそこへ当てはまっている気がすることがあります。

一度「私は体幹が弱い」と思い込むと、何かできないたびに、その理由を全部体幹に結びつけてしまう。

身体が硬いと思い込んでいる人なら、できない動きが出るたびにストレッチを増やしてしまうかもしれません。

でも、本当に原因がそこなのかは分かりません。

自分の身体について考えることはいいのですが、できない理由を一つに決めてしまわないほうがいいと思います。

「危険」という動画を見すぎて、動くことが怖くなる人もいる

最近は、身体を痛めないための情報もたくさんあります。

「このやり方では膝を痛めます」

「このストレッチは危険です」

「この立ち方は腰に負担がかかります」

大人の方を教えるうえで、安全性はもちろん重要です。

私もレッスンではかなり気をつけています。

ただ、こうした動画をたくさん見た結果、身体を動かすこと自体が怖くなっている人もいます。

プリエをするたびに膝が心配になり、ルルベをすると足首が不安になる。ジャンプをすると、着地のたびに「これで大丈夫なのか」と気になる。

実際に痛みが出ているなら、そのまま続ければいいわけではありません。

ただ、動画で「この動きは危険」と説明されていたことと、今自分が行っている動きが危険な状態なのかは分けて考えたほうがいいと思います。

実際のレッスンでは、目の前の動きを見ながら調整できます。

足を開きすぎていれば角度を戻しますし、プリエが深すぎて身体が崩れるなら少し浅くします。ジャンプの着地が安定しなければ、動きを小さくしたり、もっと簡単なところへ戻したりもできます。

SNSの動画は一般的な注意点を教えてくれます。

でも、今あなたが行った一回のプリエを見ているわけではありません。

では、SNSを見ないほうがいいのか

ここまで書くと、

「だったらバレエの動画は見ないほうがいいんでしょうか」

と思う方もいるかもしれません。

私はそうは思いません。

好きなダンサーを見るのも楽しいですし、海外のレッスンを見られるのも今の時代のいいところだと思います。

自分がレッスンで聞いた説明が分からなかったときに、別の先生の説明を見て急に理解できることもあります。

使い方の問題です。

レッスンで、

「プリエをすると膝が内側へ入ります」

と実際に注意されたとします。

そのあとで膝やターンアウトについて調べるなら、自分が何について調べているのかがある程度分かっています。

そこで新しい方法を見つけたら、次のレッスンで先生に聞いてみてもいいと思います。

「こういう説明を見たんですが、私の場合もこれを意識したほうがいいですか」

と聞けば、その人の身体を見たうえで答えてもらえます。

場合によっては、その方法を試してもいいと言われるでしょうし、今はそこより別のところをやったほうがいいと言われるかもしれません。

すでに意識しすぎているから、一度やめたほうがいいということもあります。

こういう使い方なら、SNSはかなり便利だと思います。

先生とSNSで言っていることが違ったら

動画で見た説明と、自分が普段習っている先生の説明が違うこともあります。

そのとき、すぐにどちらかを間違いだと決めなくていいと思います。

まず、自分の先生がなぜその注意をしているのか聞いてみる。

「動画ではこういう説明を見たんですが、私に言われていることとはどう違うんでしょうか」

と聞けばいいでしょう。

私は、こういう質問をしてもらうこと自体は問題ないと思っています。

むしろ、生徒さんが何を考えているのか分かるので、説明しやすくなることもあります。

もちろん、先生によって教授法や考え方が違うことは実際にあります。

流派による違いもありますし、先生自身の経験によって言葉の使い方が違うこともあります。

何でも「どちらも正しい」で済むわけではありません。

それでも、短い言葉だけを比べて判断するより、「なぜその方法を使っているのか」まで聞いたほうが理解しやすいと思います。

バレエの「正しさ」は、止まった形だけでは分からない

SNSでは、完成した形がとても目に入りやすいと思います。

きれいなアラベスクやアティチュード、パッセ、一番ポジション。

写真なら、その形に自分を近づけようとすることもできます。

でも、バレエはポーズを一つずつ作っているわけではありません。

パッセになる前には、その位置へ脚を持ってくる動きがあります。

アラベスクに入る前にも、そこへどう重心を移したかがあります。

きれいな形に見えていても、その位置に入る途中で骨盤が大きく崩れていたら、次の動きへつなげにくいことがあります。

一瞬だけ似た形を作ることと、踊りの中でその形を使えることは違います。

レッスンでは、完成したところだけを見るわけではありません。

どこから動き始め、途中で何が起こり、そこから次の動きへどう移ったのかまで見ます。

SNSでプロのダンサーが動いている動画を見ることはできます。

ただ、自分が同じことをしたときに、身体の中で何が起こっているのかは、その動画からは分かりません。

大人から始めるバレエほど、その人なりの順番が必要になる

私は大人からバレエを始める方を長く見ていますが、大人の身体は本当に一人ひとり違います。

同じ年齢でも、今までどんな生活をしてきたかでかなり違います。

運動経験がほとんどない人もいますし、別のスポーツを長く続けてきた人もいます。

身体が柔らかい人もいれば、柔軟性はそれほど高くなくても筋力がある人もいます。

仕事で一日中座っている方と、立ち仕事の方でも身体の使い方は変わります。

昔バレエをやっていて、何十年かぶりに再開した方もいます。

こうした人たちに、同じ「正しい方法」を同じ順番で入れていけばいいとは思いません。

まず足裏を安定させたほうがいい人もいます。

反対に、力が入りすぎているので、何かを足す前に少し余計な力を減らしたほうがいい人もいます。

柔軟性が十分あるなら、さらに伸ばすことより、その範囲を支えられるようにするほうが先になることもあります。

最終的に目指している動きが同じでも、そこまでの順番は変わります。

SNSは、その人の身体に必要な順番で動画を出してくれるわけではありません。

今日はターンアウトの動画が流れてきて、次の日には甲を出す方法が出てくる。そのあとにピルエットや開脚の動画が続くかもしれません。

でも、自分の身体がその順番で覚えたほうがいいとは限りません。

「知らないからできない」のではなく、まだ身体が覚えていないこともある

バレエでうまくできないとき、

「何か知らないコツがあるんじゃないか」

と思うことがあります。

もっと分かりやすい説明を探せばできるようになるのではないかと、動画を次々に見る人もいます。

でも、バレエでは、もう答えを知っているのに身体がまだできないことがたくさんあります。

膝を伸ばしたほうがいいことは知っているのに、タンデュをすると曲がる。

軸脚に乗ったほうがいいことは理解しているのに、ピルエットになると外れてしまう。

足先を伸ばすことも知っているけれど、ジャンプになるとそこまで意識が回らない。

この段階では、さらに新しい説明を増やしたからといって変わるとは限りません。

知識として理解したものを、動きながらできるところまで身体に覚えさせる必要があります。

バレエを長くやっている人でも、

「分かっているのにできない」

ということはあります。

頭で理解できたら、次は身体が追いつくまで練習する。

そこにはどうしても時間が必要です。

同じ注意を何度もされることを、失敗だと思わなくていい

「また同じことを注意されました」

と落ち込む方もいます。

前にも言われたことをまた注意されると、自分は全然変わっていないように感じるのだと思います。

でも、レッスンを長く見ていると、同じ注意を繰り返しながら変わっていくことは普通です。

最初のうちは、先生に言われて初めて気づきます。

それが続くと、途中で自分でも「あ、またやっている」と分かるようになります。

さらに時間が経つと、先生に言われる前に直せるようになり、いつの間にか意識しなくてもできるようになっていきます。

ここまで数か月かかることもあります。

ですから、同じことを言われているからといって、何も進んでいないとは限りません。

SNSでは毎日のように新しい情報が出てきます。

自分まで毎回新しい課題に変える必要はありません。

情報の多さと、上達の速さは比例しない

今は昔と比べて、バレエについて知ることが本当に簡単になりました。

それなら、昔より早く上達できそうに思えます。

知識を得るという意味では、その通りだと思います。

昔なら知るまでに時間がかかったことを、今ならすぐ調べられます。

ただ、身体を動かす技術は、情報を受け取っただけでは身につきません。

泳ぎ方について詳しい説明を読んだからといって、水に入らず泳げるようにはなりません。

ピアノの弾き方を何時間見ても、実際に指を動かさなければ弾けるようにはならないでしょう。

バレエも同じです。

知識は役に立ちます。

でも、その知識を身体に入れるためには、実際に動かなければなりません。

だから、SNSでどれだけ詳しくなったかより、レッスンの中で自分の身体をどう使ったかのほうが、上達には大きく関係すると思っています。

急に上手になったように見えても、その前に長い時間がある

長く通っている方を見ていると、あるとき急に上手になったように見えることがあります。

一年前と比べると立ち方がかなり変わっていたり、タンデュが以前より自然になっていたり、センターでも慌てずに動けるようになっている。

本人に、

「何か特別な練習を始めましたか」

と聞いても、

「特に何もしていません」

ということがあります。

普通にレッスンへ来て、先生から言われたことを続けていただけです。

一回のレッスンではほとんど見えないくらいの小さな変化でも、半年、一年と重なるとかなり大きな差になります。

こういう変化はSNSでは扱いにくいと思います。

「これを一回やったら劇的に変わった」というほうが目に入りやすいでしょう。

でも、大人からバレエを始めた方を私が実際に見てきた中では、上達はもっと地味なことの積み重ねです。

SNSの情報は「答え」ではなく、参考にするくらいでいい

SNSで新しいことを知ったとき、

「これが正解なんだ」

とすぐ自分の身体に当てはめなくてもいいと思います。

「こういう考え方もあるんだな」

くらいで一度置いておく。

今レッスンで自分が注意されていることと関係がありそうなら、少し考えてみる。

分からなければ先生に聞く。

そのくらいの使い方で十分です。

今まで一度も問題になっていなかったところまで、動画を見るたびに、

「私もここが間違っているのかもしれない」

と増やしていく必要はありません。

バレエを真面目にやっている人ほど、正しくやりたい気持ちは強いと思います。

その気持ちがあるからこそ、できていないところをたくさん見つけようとします。

でも、一回のレッスンで十個直さなくてもいい。

今自分に必要なことを少しずつ覚えていくほうが、身体は変わりやすいと思います。

正しい情報を知っているだけでは、指導にはならない

私は先生の研修をするときにも、知識があることと教えられることは別だという話をします。

正しい姿勢について説明できたり、ターンアウトや筋肉について詳しく知っていたとしても、それだけで目の前の人の動きを変えられるとは限りません。

実際の指導では、その人がどう動いているのかを見ながら、今どこを変えたほうがいいのかを考えます。

こちらが伝えたことで動きやすくなれば、その説明を続けることがありますし、反対に身体が固くなったり別の部分が崩れたりすれば、言い方を変えることもあります。

最初に伝えた注意がその人にはうまく合わなかったと分かれば、一度それをやめることもあります。

教えるときには、正しいことを言ったかどうかだけではなく、その言葉を聞いた人の身体が実際にどう変わったかまで見ます。

同じタンデュをしていても、誰に対しても同じ言葉を使うわけではありません。

SNSは、バレエについて正しい知識を伝える場所として非常に便利だと思います。

でも、見ている人のタンデュがどう変わったかをその場で確認し、必要なら説明を変えることまではできません。

ここは、実際のレッスンとはかなり違います。

先生から習うのは、情報をもらうためだけではない

昔は、バレエについて知るためにも先生が必要でした。

今は、知識だけならかなりの部分をインターネットで調べられます。

では、先生が必要なくなったかというと、私はそうは思いません。

むしろ情報が増えたからこそ、自分に今何が必要なのかを見てもらう意味は以前より大きくなっているように感じます。

自分では身体が硬いと思っていても、実際には柔軟性が十分あるかもしれません。

筋力が足りないと思っていても、力が足りないのではなく、必要以上に固めていることが問題になっていることもあります。

ターンアウトが足りないと思っている人が、すでに今の身体では十分な角度を使っていることもあります。

逆に、本人が全く気にしていなかったところが、動きを大きく崩している場合もあります。

先生は、バレエの知識を読み上げるためだけにいるのではありません。

実際にその人が動いているところを見て、今どこから始めるかを考えるところに意味があります。

SNSの中の人と、自分をそのまま比べなくていい

SNSを見ていると、どうしても画面の中の人と自分を比べます。

脚が高く上がる人。

きれいにターンアウトしている人。

何回転もできる人。

そういう動画ばかり見ていると、

「同じバレエをやっているのに、私は全然できない」

と思うこともあるでしょう。

でも、その人がどれくらいバレエを続けてきたのかは分かりません。

子どもの頃から踊っているのかもしれませんし、毎日のようにレッスンをしている人かもしれません。

何回も撮った中で一番うまくできた一回を投稿しているかもしれません。

その背景を知らないまま、自分と同じ条件だと思って比べる必要はありません。

大人から始めた人には、大人から始めた人なりの時間があります。

週一回の人なら、その頻度で少しずつ変わっていけばいいと思います。

半年前までセンターに出ると順番が分からなくなっていた人が、最近は最後まで動けるようになった。

毎回タンデュで膝を注意されていたのに、以前より言われる回数が減ってきた。

ルルベでほとんど立てなかった人が、少し長く保てるようになった。

こういう変化は、SNSの中の誰かと比べても見えません。

でも、実際の上達としては十分意味があります。

正しくやろうとしすぎて、バレエそのものが嫌にならないでほしい

バレエを始めると、できないことはたくさんあります。

立ち方を注意され、脚を出せば膝や足先を言われ、腕を動かせば肩や肘を直される。

センターへ行けば順番が分からなくなることもあります。

そこにSNSから、

「そのターンアウトは間違い」

「そのストレッチは危険」

「そのプリエでは上達しない」

という情報まで入ってくる。

真面目にやろうとする人ほど、

「自分は何をやっても間違っているんじゃないか」

という気持ちになることがあります。

でも、最初から全部正しくできる人はいません。

レッスンでは、できないところがあるから先生から注意されます。

一度直しても、また元に戻ります。

何度か繰り返すうちに少し身体が覚え、今度は別のところを直します。

そうやって続けていきます。

先生から注意されたことは、自分がバレエに向いていないという意味ではありません。

今そこを少し変えれば、今より動きやすくなるという話です。

正しくやろうとすることは悪くありません。

ただ、正しい情報を集めすぎた結果、身体を動かすことが怖くなったり、バレエそのものが苦しくなったりする必要はないと思います。

画面の向こうには、自分の身体はいない

SNSで発信している先生がどれだけ優秀でも、動画を見ているあなたの身体を見ることはできません。

あなたの股関節がどこまで動くのか。

右と左でどんな違いがあるのか。

プリエをしたときに足裏がどうなっているのか。

今どのくらいの頻度でレッスンをしているのか。

前回どんなことを注意され、その前から何が変わってきたのか。

そういうことは、動画の発信者には分かりません。

実際のレッスンなら、以前の状態と比べながら見ることができます。

前はここで崩れていたけれど、最近は安定してきた。

なら、今度は少し先のことをやってみよう。

そうやってその人の身体に合わせて進めることができます。

バレエは、正しい答えをどれだけ知っているかを競うものではありません。

知ったことを、自分の身体で少しずつ使えるようにしていくものです。

「正しいバレエ」を探し続けるより、自分のレッスンに戻る

これからもSNSには、いろいろなバレエの情報が出てくると思います。

新しいトレーニング方法も出てくるでしょうし、今まで聞いていたものとは違う身体の使い方を説明する先生もいるでしょう。

興味があるものは見ればいいと思います。

役に立つものもたくさんあります。

ただ、新しい動画を見たからといって、昨日まで教わってきたことを全部捨てなくてもいい。

別の先生が違うことを言っていたからといって、すぐに今の先生が間違っていると決める必要もありません。

まして、

「この動画で見る正しい形ができないから、自分はバレエに向いていない」

と思わなくていい。

分からなくなったときは、一度自分のレッスンへ戻ってみてください。

最近、自分は何を注意されているのか。

少し前と比べて、何ができるようになったのか。

今一番困っているのはどの動きなのか。

SNSで見た情報がそこにつながるなら、参考にすればいいと思います。

今の自分とはあまり関係がないなら、無理に取り入れなくてもいい。

数か月後、同じ動画を見たときに、前には分からなかった説明が急に理解できることもあります。

バレエでは、一度聞いた言葉の意味が、身体の経験が増えてからようやく分かることがあります。

大人から始めると、できるだけ早く上手になりたいと思うでしょう。

効率のいい方法を探したくなる気持ちも分かります。

ただ、新しい情報を増やすことが、そのまま近道になるとは限りません。

場合によっては、新しい動画をもう一本見るより、今日のレッスンで言われたことを来週もう一度やるほうがいいことがあります。

何度もプリエをして、何度もタンデュをして、また同じことを注意される。

それを続けているうちに、以前より自然にできるようになっている。

私は大人の方を教えながら、そういう変化をたくさん見てきました。

SNSで見る「正しいバレエ」は、参考にしていいと思います。

ただ、そのまま自分の身体に当てはめなくていい。

画面の中で誰かがやっている正しい形より、今の自分の身体がどう動いているかを見る。

それを先生に見てもらいながら、自分に必要なものを少しずつ覚えていく。

大人からバレエを続けていくなら、そのほうが結果的には遠回りにならないと思っています。

https://personalballet.com/academy/

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