プリエが深いのにジャンプが低い理由|バレエのジャンプは「深さ」より「戻り方」
こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
バレエを指導していると、こういう相談をよく受けます。
「プリエは深くできるのに、ジャンプが全然飛べません」
「しっかり沈んでいるのに、上に行けません」
「着地が重くて、脚がすぐ疲れます」
本人は頑張っています。
先生に「もっとプリエを使って」と言われて、深く沈むことも意識しています。
それなのに、ジャンプが重い。
高さが出ない。
着地で潰れる。
ふくらはぎばかり疲れる。
この場合、単純に筋力が足りないだけとは限りません。
結論から言うと、プリエが深いのにジャンプが低い人の多くは、プリエが「沈む動作」になっていて、ジャンプのための「反発を作る動作」になっていません。
プリエは、深く沈めばいいわけではありません。
ジャンプにつなげるためには、沈んだあとに素早く戻れる位置でプリエを使う必要があります。
プリエが深いのにジャンプが低くなる理由
バレエのジャンプは、脚力だけで決まるものではありません。
もちろん筋力は必要です。
しかし、ジャンプの質を決めるのは、主に次の3つです。
・沈み方
・床の押し方
・戻り方
この3つがずれると、どれだけ深くプリエをしても、ジャンプは軽くなりません。
ジャンプは、床を押すことで身体が上へ返される動きです。
このときに働くのが、床から返ってくる力、つまり床反力です。
床反力をうまく使うには、ただ深く沈むのではなく、沈んだところから素早く切り返す必要があります。
深く沈むこと自体は悪くありません。
問題は、深く沈みすぎて、上に戻る準備が消えてしまうことです。
プリエが深いのに飛べない人は、深いから飛べない場合があります。
沈む。
止まる。
崩れる。
上がる前に力が抜ける。
この流れが起きると、プリエは深くてもジャンプにはつながりません。
人生でも「深くしゃがんだ方が高く飛べる」と言われることがあります。
ただ、深くしゃがむにも限度があります。
しゃがみ方を間違えると、下に行ったまま戻ってこられません。
バレエのプリエも同じです。
ジャンプで大事なのは「深さ」より「切り返し」
ジャンプで必要なのは、深く沈むことではありません。
必要なのは、速く伸びることです。
そして、速く伸びるためには、沈んだところからすぐに戻れる位置でプリエを使う必要があります。
つまり、ジャンプにつながるプリエは「深さ」ではなく「切り返し」です。
プリエの一番下で止まってから跳ぼうとすると、反発は逃げます。
下と上が別々の動きになり、ジャンプが重くなります。
軽いジャンプを作るには、下に沈む動きと、上へ戻る動きを切り離さないことが大切です。
プリエは、下に行くための動きではありません。
上に戻るための準備です。
プリエが深い人に多い、もったいない沈み方
プリエが深いのにジャンプにつながらない人には、よくある共通点があります。
1. 骨盤が後ろに倒れて、腰が抜ける
深いプリエをしようとして、骨盤が後ろに倒れてしまう人がいます。
見た目には深く沈んでいるように見えます。
しかし、骨盤が後傾して腰が抜けると、脚のバネが消えます。
この状態では、床を押して上に戻る準備ができません。
深いけれど重い。
沈めるけれど戻れない。
こういうプリエになりやすくなります。
2. 膝が前に出すぎて、足裏が潰れる
プリエで膝だけが前に出すぎると、足裏が潰れやすくなります。
膝は曲がっている。
でも、足裏で床を押せない。
この状態では、ジャンプに必要な反発が作れません。
バレエで大切なのは、膝を深く曲げることそのものではありません。
足裏で床を感じながら、身体の真ん中を保って沈むことです。
母趾球、小趾球、踵の感覚が消えるほど潰れてしまうと、床を押す準備も消えてしまいます。
3. 沈んだところで止まる
プリエの一番下で止まってから跳ぼうとする人も多いです。
しかし、止まった瞬間に反発は逃げます。
ジャンプで大事なのは、止まらずに折り返すことです。
プリエで下に行き、そこで一度止まってから「さあ跳ぼう」とすると、動きが分断されます。
ジャンプは、下と上が別々になるほど重くなります。
4. ふくらはぎだけで跳ぼうとしている
プリエの使い方が崩れると、最後にふくらはぎだけで頑張りやすくなります。
その結果、跳ぶ前からふくらはぎが疲れる。
着地でふくらはぎに負担が来る。
ジャンプの回数が増えるほど脚が重くなる。
こういう状態になりやすいです。
ふくらはぎは大切です。
ただし、ふくらはぎだけでジャンプを作ると、軽さは出にくくなります。
床を押す準備は、足裏、膝、股関節、骨盤、体幹のつながりで作ります。
自分でできるセルフチェック
次の3つを確認してみてください。
チェック1:深いプリエの一番下で、足裏が潰れていないか
プリエの一番下で、足裏がふにゃっと潰れていないかを見ます。
母趾球、小趾球、踵の感覚がなくなり、足裏全体が流れている場合、床を押す準備ができていない可能性があります。
チェック2:プリエの下で、お尻が後ろに逃げていないか
横から見て、プリエの一番下でお尻が後ろに逃げていないかを確認してください。
骨盤が後ろに倒れ、腰が抜けている場合、脚のバネが使いにくくなります。
深く沈んでいるように見えても、上に戻る力が残っていないことがあります。
チェック3:プリエの下で、一瞬止まってから跳んでいないか
小さいジャンプをしてみてください。
プリエの下で一瞬止まってから跳んでいる場合、反発が逃げています。
ジャンプが重く感じる人は、この止まり方をしていることが多いです。
当てはまるものが多いほど、プリエは深いのにジャンプが低くなりやすくなります。
ジャンプを軽くする3分ルーティン
ここからは、負担を増やさずにプリエとジャンプをつなげる練習です。
スタジオでも家でもできます。
最初に安全ルールを確認します。
・深さを追わない
・膝、足首、アキレス腱に痛みがある角度には入らない
・成功基準は「高く」ではなく「軽く」
・着地の音が大きくなるなら、高さを下げる
・痛みがある日はジャンプ練習を無理に行わない
ジャンプを高くする練習ではなく、ジャンプを軽くする練習だと思ってください。
ステップ1:プリエは「深さ」ではなく「真ん中」
まず、両脚でプリエをします。
かかと、母趾球、小趾球で床を感じます。
骨盤を後ろに倒さないようにします。
深く沈む必要はありません。
5回だけ行います。
目的は、深く沈むことではなく、沈んでも身体の真ん中にいることです。
プリエの途中で足裏が潰れたり、骨盤が後ろに逃げたりする場合は、そこまで深く入らないでください。
今の自分が、真ん中を保てる深さを見つけることが大切です。
ステップ2:止まらない折り返し
次に、浅めのプリエを使って、止まらずに伸びる練習をします。
プリエで下まで行かなくて構いません。
浅くて大丈夫です。
下で止めずに、そのままスッと伸びます。
これを10回行います。
ポイントは、沈むことを頑張らないことです。
伸びる方を速くします。
ジャンプの準備としてのプリエは、下に行く動きで終わってはいけません。
上に戻るための折り返しが大切です。
ステップ3:小さく跳んで、静かに降りる
最後に、その場で小さいソテをします。
高く跳ぶ必要はありません。
むしろ、高さを出そうとしない方がいいです。
目標は、次の3つです。
・音を小さくする
・着地で潰れない
・次のプリエにすぐ入れる
これを10回行います。
着地の音が大きい場合、床を押す前に身体が落ちています。
着地で潰れる場合、プリエが受け止めではなく崩れになっています。
小さく跳んで、静かに降りる。
これができると、ジャンプは少しずつ軽くなります。
次に進む目安
次の感覚が出てきたら、練習は良い方向に進んでいます。
・浅いプリエでも床が押せる感覚がある
・小さいジャンプが軽くなる
・着地の音が静かになる
・次のプリエにすぐ入れる
・ふくらはぎだけが先に疲れなくなる
・膝や足首に不安が出ない
ジャンプが変わるとき、最初に変わるのは高さではありません。
まず、軽さが出ます。
次に、着地が静かになります。
そのあとに、高さが出やすくなります。
最初から高さを狙うと、また深く沈みすぎる癖に戻りやすくなります。
よくある失敗
ジャンプが重くなる人は、次のようなことをやりがちです。
・深く沈むことに全力を使う
・膝を前に出しすぎて沈む
・足裏が潰れて床を押せなくなる
・骨盤が後傾して腰が抜ける
・沈んだ一番下で止まる
・ふくらはぎだけで跳ぼうとする
・ジャンプを「上に行く動き」だけだと思っている
ジャンプは、上に行く動きに見えます。
しかし実際には、下に沈む準備と、床を押して戻る力のつながりで決まります。
下が崩れれば、上には行けません。
痛みがある場合は無理をしない
ジャンプは、膝、足首、アキレス腱、足裏に負担がかかりやすい動きです。
次のような場合は、練習で押し切らないでください。
・膝に鋭い痛みがある
・足首に不安定感がある
・アキレス腱に痛みや違和感がある
・足裏や踵に痛みがある
・着地のたびに痛みが増える
・ジャンプ後に腫れや熱感が出る
この場合は、ジャンプの回数を増やすより、まず状態を確認することが大切です。
必要であれば、医療者や専門家に相談してください。
痛みを我慢して跳び続けても、ジャンプは軽くなりません。
むしろ、余計に身体が守りに入り、動きが重くなることがあります。
プリエとジャンプの考え方を変える
プリエが深いのにジャンプが低い人は、才能がないわけではありません。
順番が逆になっているだけです。
特にバレエは、手順が大切です。
深く沈む前に、まず真ん中で沈む。
次に、止まらずに折り返す。
そして、床を押して戻る。
この順番に変えるだけで、ジャンプは軽くなります。
深さを増やすのは、そのあとです。
まず1日1分からでいい
ジャンプを変えたい人は、いきなり高く飛ぼうとしないでください。
まずは、浅いプリエで真ん中を保つ。
止まらずに伸びる。
小さく跳んで、静かに降りる。
この3つだけで十分です。
負担にならない強度でいいので、1日1分から試してみてください。
プリエは、沈むための動きではありません。
ジャンプにつなげるための準備です。
深く沈むより、軽く戻る。
ここが分かると、バレエのジャンプは変わります。
FAQ
プリエが深いのにジャンプが低いのはなぜですか?
プリエが「沈む動作」になっていて、ジャンプのための反発を作れていない可能性があります。深く沈むことより、沈んだあとに素早く戻れる位置でプリエを使うことが大切です。
ジャンプが低いのは筋力不足ですか?
筋力も関係しますが、筋力だけが原因とは限りません。沈み方、床の押し方、戻り方の順番がずれていると、筋力があってもジャンプは重くなります。
プリエは深い方がジャンプしやすいですか?
必ずしもそうではありません。深く沈みすぎて止まったり、骨盤が後ろに倒れたり、足裏が潰れたりすると、反発が逃げてジャンプは低くなります。
ジャンプで大事なのは何ですか?
深く沈むことではなく、止まらずに折り返して、床を押して戻ることです。プリエの一番下で止まらないことが重要です。
床反力とは何ですか?
床反力とは、足で床を押したときに、床から身体へ返ってくる力のことです。ジャンプでは、この力を逃がさずに上方向へつなげることが大切です。
着地が重いときは何を直せばいいですか?
まず小さいジャンプで、音を小さく静かに降りる練習をしてください。着地で潰れず、次のプリエにすぐ入れることを目標にします。
ふくらはぎばかり疲れるのはなぜですか?
プリエで床を押す準備が作れていないと、最後にふくらはぎだけで頑張りやすくなります。足裏、膝、股関節、骨盤、体幹のつながりを作ることが大切です。
家でできる練習はありますか?
浅いプリエで真ん中を保つ練習、止まらずに伸びる練習、小さいソテで静かに降りる練習がおすすめです。1日1分からで十分です。
膝や足首が痛い場合もジャンプ練習をしていいですか?
膝、足首、アキレス腱、足裏に痛みがある場合は、無理にジャンプ練習をしないでください。痛みが続く場合や悪化する場合は、医療者や専門家に相談してください。




