こんにちは、大人バレエアカデミー、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
バーの順序って本当にこの並びがベストなのか。答えとしてはかなり合理的です。筋温を上げるだけでなく、感覚と神経の回路を段階的に起動する設計が組み込まれています。今日は、代表的な流れを分解し、レッスンで使えるチェックまでまとめます。
結論
・順序は、感覚の点灯 → 小さな出力 → 多方向の協調 → 素早い収縮 → 大きな可動と速度。
・体温より先に、固有感覚・前庭・視覚の回路をつなぐことが肝。
・順番を飛ばすと、センターでの安定と反応速度が落ちる。
標準的な順序と狙い
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プレパレーション
狙い:姿勢の基準合わせ。視線・呼吸・足裏三点の電源を入れる。
キュー:踵に6割→母趾球3割→小趾球1割を往復し平均を作る。 -
プリエ
狙い:固有感覚と関節位置感覚の更新。
ポイント:膝はつま先方向、骨盤は縦移動。呼吸は止めない。 -
タンデュ
狙い:末端の微調整回路を起動し、線の精度を作る。
ポイント:かかとが最後。戻しで足裏の圧を拾う。 -
ジュテ(デガジェ)
狙い:小振幅での素早いオン・オフ。
ポイント:蹴らずに股関節から“離す→戻す”。 -
ロン・ド・ジャンブ(ア・テール)
狙い:多方向協調。股関節の旋回×体幹固定。
ポイント:骨盤を回さず、床の円を均一速度でなぞる。 -
フォンデュ
狙い:支持脚の等尺安定と動脚可動の同期。着地予告の回路作り。
ポイント:両脚が同時に伸びる瞬間の静止。 -
フラッペ
狙い:打ち返しによる反射の安全起動。
ポイント:当てる→離す→残す。足首は固めすぎない。 -
アダージオ(デベロッペ等)
狙い:低速での位置制御。長いレバーを静かに運ぶ。
ポイント:動脚より支持脚と肋骨の静けさを優先。 -
グラン・バットマン
狙い:可動と速度の最大化。ここまでの回路を総動員。
ポイント:上げた後の戻しと停止までが1セット。腰は反らさない。
5分プレセット(レッスン前の最小投資)
・足裏スキャン 1分
・8秒吐く→自然吸気×3 1分
・タンデュ前後×各6回 1分
・スポッティング×20回 1分
・プリエ小→中 1分
よくある誤解と修正
・汗をかくまで動けば良い
→ 序盤は汗より静かな停止。止まれる範囲の確認を優先。
・グランを増やせば柔らかくなる
→ 可動の制御をアダージオで作ってから速度を足す。
・フラッペは音が大きいほど良い
→ 音量ではなくタイミング。打つ→離す→残すを均一に。
ケーススタディ
Aさん:序盤から足が重い
介入:タンデュ前に足裏スキャン30秒、かかと最後の合図を追加。
結果:線の精度が上がり、ジュテが軽くなる。
Bさん:グランで腰が反る
介入:アダージオで“戻しに1秒静止”ルール、肋骨は呼気で後ろ。
結果:勢いに頼らず停止が安定。
チェックリスト(教師・自己練用)
・各課題の目的を1つに絞る
・終点で1秒止まれる角度で終える
・呼吸を途切れさせない(吐き切り→自然吸気)
・足で蹴らず、股関節から運ぶ
・序盤で視線の安定を作る(スポットは単独練)
まとめ
バーは慣習ではなく、神経系のウォームアップの設計図。
位置の地図→微細出力→多方向協調→速いオンオフ→大振幅。
この階段を丁寧に上がるほど、センターでの安定とキレが変わります。
何を狙ってレッスンをしているのか、ぜひきちんと考えて受講してみて下さい。
上達するものが変わってきますよ