こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
先生に「家でも練習してください」と言われたことを、皆さんはいつまで続けているでしょうか。
できるようになるまで、という答えもあるでしょう。
でも、何ができればその練習を終えてよいのか、分からないまま続けているものはありませんか?
毎日やることは教わった。
回数も決められている。
ただ、今も同じ練習が必要なのかは、一度も確かめていない。
できているかもよくわからない
長く習うほど、そういうものが増えていたら、家でやることは増える一方です。
前の先生に教わった練習も、今の先生に教わった練習も残っている。
そこに動画で見つけた方法や、友人から勧められたトレーニングが加わる。
どれもバレエに役立ちそうですし、やらないよりはやったほうがよい気がするでしょう。
でも、大人がバレエに使える時間には限りがあります。
仕事や家のことを終えて作った時間を、全部こなすことだけに使ってしまってよいのでしょうか。
上手くなりたいならば努力したほうがいいのは間違いないでしょう。
ただ、教わったものをいつまでも全部抱えていることが、上達のために必要な努力かは疑ったほうがいいかもしれません。
先生に教わった練習も、全部が一生分の宿題ではありません
例えば、バーレッスンで脚を動かすと、身体も一緒に動いてしまう。
その部分を直すために、先生からゆっくり確認する練習を教わったとします。
家でも繰り返して、少しずつできるようになってきた。
最初は動かすたびに分からなくなっていたのが、今は自分で確かめながら練習できる。
そうなったら、次はレッスンの速さでもできるか、ほかの動きと続けてもできるかを習う段階かもしれません。
ゆっくり確認する練習は、引き続き必要な場合もあります。
ただ、最初と同じ内容を、同じ量だけ、ずっと続ける必要があるかは別です。
できることが変われば、練習の内容も変わります。
これは、前に教わったことが間違っていたという話ではありません。
ところが、やめてよいと言われていないから、本人はずっと続ける。
新しい課題をもらったら、それも追加する。
先生は今の課題を教えたつもりでも、生徒の中では、過去の課題が全部残っているかもしれないのです。
真面目な方ほど、教わった練習を自分から減らすのは難しいでしょう。
先生の言うことを守っていないように感じたり、やめたらできなくなるのではないかと心配になったりする。
だから、教師は練習を追加するときに、今まで何をしていたかも確認する必要があります。
前の練習は引き続き必要なのか。
確認する程度でよいのか、それとも今は新しい課題に時間を使ってほしいのか。
そこまで伝えないと、生徒には、何を優先すればよいかが分かりません。
「これもやっておいてください」と言うのは簡単です。
でも、それをするのは、仕事や家事を終えた生徒さんです。
課題を出す側が、その時間を考えなくてよいわけではありません。
「やったほうがよい」を集めても、自分に必要な練習は決まらない
バレエについて調べれば、役立ちそうな練習はいくらでも見つかります。
足裏のトレーニングを見れば、足裏が大事だと納得する。
体幹の話を読めば、こちらも必要だと感じる。
上手な人が毎日やっていると聞けば、同じようにやってみたくなる。
ただ、バレエ全般に役立つことと、今の自分が取り組むべきことは、同じではありません。
例えば、センターで片脚になると立てないので、自宅でも練習したいとします。
その人は、片脚になる前の体重の移し方を理解しているでしょうか。
先生と一緒にゆっくりやればできるのでしょうか。
立つところまではできても、次の動きに移ろうとすると崩れるのでしょうか。
どこで困っているかによって、教わることも練習することも変わります。
それを確かめる前に、「片脚で立てないなら体幹が足りない」と決めてしまうと、本人は体幹のトレーニングを増やすしかありません。
毎日続けても立ち方が分からなければ、まだ鍛え方が足りないのだと考えて、さらに頑張ってしまうでしょう。
練習量の問題なのか、やり方を知らないのかを分けないと、どこまでやっても終わりません。
本人は、上手くなるために時間を使っています。
だからこそ、何を増やせばよいかを探す前に、今分からないところを具体的にしたほうがよいのです。
自分で全部分析できる必要はありません。
「片脚で立てません」だけでなく、「ゆっくりなら立てますが、音楽に合わせて移ると間に合いません」と分かれば、確認する範囲は狭くなります。
そこに必要な練習を教わったなら、まずはそれに取り組む。
別の人が違うトレーニングをしていても、すぐに自分のメニューへ加えなくてよいでしょう。
その人にはその人の課題があります。
同じことを全部やらないと置いていかれる、というものではありません。
できないから続けるのか、変わっているから続けるのか
では、変化が分からない練習はやめてしまってよいのでしょうか。
そこも、すぐに決めないでほしいです。ここが難しいところです。
やり方を理解してから、踊りの中で使えるようになるまでには時間がかかります。
毎回のレッスンで、はっきり上達を感じられるとは限りません。
ただ、「まだできないから、同じ練習をもっとやる」だけでは、練習が足りないのか、方法を変えたほうがよいのかが分かりません。
例えば、腕だけなら教わったように動かせる。
脚の動きが加わると、元に戻ってしまう。
この人が「今日も腕を直せなかった」とだけ考えたら、全部できていないことになります。
でも、腕だけならできるところまで進んでいるのです。
次に練習するのは、脚と一緒に動かすところでしょう。
そのために順番を短くするのか、音楽を使わず確かめるのかを考えられます。
前は先生に直してもらわないと分からなかったのが、今は自分で違いに気づける。
まだ毎回はできなくても、ゆっくりなら教わったことを再現できる。
そういう変化があれば、練習の途中です。
完成した踊りだけを見て、効果がなかったと決める必要はありません。
一方で、毎日練習しているけれど、何を変えようとしているかが曖昧なまま。
回数は増えたものの、実際の動きは一度も見てもらっていない。
その場合は、続ける量を決める前に、練習の中身を確認したほうがよいでしょう。
自分で振り返るなら、「今日は何回やったか」に加えて、「何を試したか」を思い出してみてください。
「腕だけならできたので、脚と一緒に動かしてみた。でも、途中から分からなくなった」
そこまで分かれば、次に確かめることがあります。
「今日も駄目だったから、明日はもっと頑張る」では、明日の練習方法は決まりません。
自分を責めることまで、努力に含めないでください。
できなかった部分を具体的にして、次の練習に使えれば十分です。
限られた時間の中で、何を残すか
例えば、家で練習できる時間が二十分だとします。
昔から続けているメニューを全部やると、それで終わってしまう。
今日教わったことを試すには、さらに時間を作らなければいけない。
ここで毎回、時間を延ばすことだけを選んでいたら、いずれ続けられなくなるでしょう。
今の課題に時間を使うために、以前の練習を見直す。
これは、上達を諦めることではありません。
まず、家でやっている練習が、何のために始まったものかを思い出してみてください。
今の課題に必要で、やり方も分かっているものは、引き続き取り組めます。
前の課題のために始めたものは、その課題が今どうなっているかを確認する。
人から勧められて始めたけれど、目的が分からないものは、今も必要かを聞く対象にする。
目的が分からないから無駄だと決めるのではなく、何も確かめずに続けるのをやめるのです。
これは、練習を始めるたびに効果を測って、効率よくやらなければいけないという話でもありません。
以前からの習慣や、人の勧めを全部背負ったまま、新しい課題だけが増えていないかを見直してほしいのです。
長く続けた練習ほど、変えるのは難しいかもしれません。
やめたら、それまでの努力が無駄になるように感じることもあるでしょう。
でも、習って分かることが増えれば、必要な練習も変わります。
以前の自分に必要だったものを、今の自分が同じように続けるとは限りません。
前の先生にお世話になったことと、今の練習を選ぶことも別です。
教えていただいたことへの感謝は、すべての練習を続けることで示さなくてもよいでしょう。
大人バレエアカデミー™で私が応援したいのは、上手くなりたい大人です。
そのために、できるようになるまで繰り返してもらう練習もあります。
ただ、教師が「もっと頑張って」と言い続け、生徒が足りない時間を何とか作るだけでは、指導として不十分です。
何が変わったのかを見て、次は何に取り組むかを決めるところまで、教える側が考えなければいけません。
生徒さんも、使った時間の長さだけで、バレエへの真剣さを測らなくてよいです。
今の課題を練習できたなら、いつもより早く終わる日があっても構いません。
次の自主練の前に、いつもやっている練習を一度書き出して、それぞれの横に「何ができるようになるために始めたか」を添えてみてください。
書けなかったものや、昔の課題のままになっているものから、今も同じように続ける必要があるかを確かめてみてください。




