こんにちは。大人バレエアカデミー、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
今日は「関節は“強くならない”」という、とても大切なテーマをブログとしてまとめます。
結論(先に言います)
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関節そのものはトレーニングで強くなりません。
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痛みを「試練」と勘違いして痛む関節を使い続けるのは逆効果です。
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守れるのは関節“まわり”の筋肉・使い方・動き方。
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関節痛がある間は一度中止、専門家に相談し、痛みが出ない範囲で再開しましょう。
なぜ関節は“強化”できないのか
関節(関節軟骨・関節包・靱帯など)は、筋肉のように「負荷→回復→肥大」で頑丈になる部位ではありません。
むしろ、**使い方を誤ると摩耗しやすい“弱点”です。
鍛えられるのは関節を安定させる筋肉(周囲の筋群)と動作の質(荷重のかけ方・軌道・タイミング)**です。
よくある誤解:「痛みを超えたら強くなる」
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ウェイトや自重トレーニングでは、筋肉の焼けつくような疲労感を超えることで適応が起こります。
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しかし関節の痛みは別物。
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刺す・ズキズキする・引っかかるといった関節痛は、中止のサイン。
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そのまま続けると、炎症→悪化→慢性化のループに入ります。
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痛みを出さないための基本原則(バレエ版)
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中間位を守る
骨盤・脊柱・股関節・膝・足首が、無理なく荷重を受けられる並びを作る。 -
荷重の軌道を整える
立脚のときは外側→内側(小趾球→母趾球)へなめらかに。押し付けるのではなく“通過”させる。 -
可動性→安定→動作の順番
まず必要可動域を確保し、次に体幹・股関節周囲の安定を作り、その後で技術練習。 -
反復は“良い形”だけ
痛みが出るフォームで回数を積むのは、悪い学習の強化。回数より再現性を優先。
関節が痛いときのチェックリスト
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□ 痛みは動作の最中か、動作後に遅れて出るか
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□ 押すと痛い・引っかかる・腫れる/熱感はないか
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□ 同じ軌道・同じ場面で毎回出ていないか
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□ 痛みが24–48時間で引かない、または回数を重ねるほど悪化していないか
→ ひとつでも当てはまるなら、一度その動作を止めて専門家へ。クラスは痛みが出ない代替メニューに切り替えましょう。
よくある部位別の見直しポイント
※以下は一般的な観点です。痛みがある場合は受診・評価を優先してください。
膝
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原因例:膝内側への崩れ、ターンアウトを膝で稼ぐ、着地の衝撃吸収不足
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即改善:股関節からの外旋に限定/膝とつま先の向きを一致/ソフトランディング
腰
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原因例:骨盤前傾の固定・反りでの“引き上げ”誤解、体幹の支持不足
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即改善:肋骨と骨盤の距離を保つ/腹圧(深層)での支持/反りで稼がない
足首・足部
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原因例:ルルベや着地で内側に潰れる、三点を“押し付ける”
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即改善:外→内の荷重の通り道を作る/足指を握りこまず長く置く
安全にレッスンへ戻る手順(簡易プロトコル)
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痛みゼロの動きから再開(ROM確認・荷重テスト)
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安定化エクササイズ(股関節外旋・中臀筋、体幹深層)
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基本動作へ段階的に(バー→センター、低負荷→高負荷)
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痛みログをつけ、再現条件(時間・動作・強度)を把握
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再発兆候で即減量。良い形が保てる範囲だけ積み上げる
まとめ
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関節は鍛えて強くする対象ではなく、守る対象。
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守る鍵は、筋力(周辺)+配列(中間位)+荷重の通し方(動作)。
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痛い関節を使って乗り越えるは迷信です。止める・整える・戻すが最短ルート。
大人バレエアカデミーからのお願い
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クラス中に関節の痛みを感じたら、すぐに講師へ。その場でメニューを痛みの出ない形に変更します。
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必要に応じて医療機関・専門家の受診をおすすめします。評価結果を共有いただければ、無理のない練習計画をご提案します。
医療に関する注意:本記事は一般的な情報提供を目的としています。診断や治療は医療専門家の指示に従ってください。
体験・ご相談
「痛みが出ない立ち方・動き方」を身につけたい方は、体験レッスン・個別相談をご利用ください。
**“無理をしないのに上達する”**方法を、解剖学と教授法でお伝えします。



