こんにちは。大人バレエアカデミー、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
今日は、日本のバレエ団にありがちな「団費制」の問題について考えてみます。
なぜ団費が必要になるのか?
団費を徴収するバレエ団は少なくありません。
その根本的な理由は、公演や活動を通して運営資金を生み出す力がないからです。
つまり、本来は観客、スポンサーからの支持、団自身のビジネス活動によって成り立つべき団体が、固定費を賄えず、団員からお金を集める構造に頼らざるを得ないのです。
「いいダンサーが来ない」という現実
団費制の最大の問題は、そもそも実力のあるダンサーが入ってこないことです。
才能あるダンサーは、団費を払ってまで所属する必要がないからです。
いいダンサーを一時のゲストで迎え主役に据えて集客は出来ますが、観客の目当てはそのスターであって団の評価はそこまで高くはなりません。
その結果、集まるのは「団費を払ってでも踊りたい」という、中途半端なレベルのダンサーが中心になります。
半分は“育成”、しかし限界がある
団はそうした団員から団費を受け取りつつ、同時に彼らを育てていく構造になります。
しかし、ここで大きな矛盾が生まれます。
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団費を払って踊る時点で「プロとして価値を生み出す力」が不足している。
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そのようなダンサーを半分“育てながら”活動しても、本当にお金を生み出せる実力者には到底勝てない。
結果として、団の水準は頭打ちになりやすいのです。
ハリボテ化の危険
体裁を整えるために大きなスタジオを借り、固定費を増やす。
それを団費で支える。
しかしその構造では、本当に中身を強くする余裕が生まれません。
外側だけは立派に見えるけれど、中身が追いつかない。
この「ハリボテ化」が、団費制バレエ団の最大のリスクです。
仮に本番前にリハーサルを大きなレンタルスタジオを借りてやるのは大変ではあります。それが自前でできたらとても楽にはなります。ただ、それでどこまで公演の質が上がるでしょうか?
逆にレンタルスタジオでリハーサルすると質はそこまで落ちるでしょうか?
家賃の高い自前のスタジオで団費ダンサーとリハーサルするのと、
価値の出せる良いダンサーを集めてレンタルスタジオでリハーサルするのと、
どちらが公演の質をあげることになるでしょうか。
大きなスタジオに家賃を払う前に、まずは団費を廃止しないと最低限のレベルを保証するダンサーを雇うことはできず、結果としてハリボテを支える為にみんな頑張るという意味不明な未来を迎えるリスクは考えないといけません。
結論
バレエ団の本当の力は、いいダンサーを集め、質の高い舞台をつくり、観客に価値を届けることからしか生まれません。
団費に頼る構造から抜け出せない限り、レベルは上がらず、真に強い団体にはなれないのです。
バレエの業界はお金の使い方が本当に下手なんです。もう少し何とかしたいですよね。