こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

バーレッスンを丁寧にこなして、いざセンターへ。
ところが、脚が重くて思うように動かない。
ジャンプの頃には、ふくらはぎがもう限界。

そんな経験はありませんか。

バレエのレッスンは、見た目よりずっとハード

ゆったりした音楽に合わせて踊るバレエは、穏やかな運動に見えるかもしれません。
けれど、実際のレッスンはかなりハードです。

2015年に発表された研究では、経験9年以上の女性ダンサー10人を対象に、レッスン中の心拍数を測りました。
レッスンは、バー9種類とセンター8種類で構成されていました。
運動の強さは心拍予備量(安静時から最大までの心拍数の幅)のおよそ80%に達し、アメリカスポーツ医学会が示す「高い強度の運動」の基準を満たす場面がありました。
最大心拍数の平均は、毎分192回を超えていました。

もちろん、これはトウシューズを履いてセンターを踊る、経験豊富なダンサーのデータです。
大人のレッスンとは、内容も強さも違います。
それでも、バレエのレッスンが体力を大きく使う運動だということは、知っておいて損はありません。

疲れた身体では、動きの質が落ちていく

では、体力を使い切った状態で踊り続けると、身体には何が起きるのでしょうか。

2026年に発表された研究では、14人のダンサーに片脚のルルヴェをくり返してもらいました。
ふくらはぎが疲れてくると、かかとの高さが下がり、足首の動きも小さくなっていきました。
かかとを下ろす局面では、ふくらはぎの筋肉はむしろ強く働いていたのに、動きを保てなくなっていたのです。
研究者たちは、疲労の限界やその近くで練習を続けることは避けるべきだとしています。

別の研究では、女性ダンサー14人にジャンプと振付をくり返してもらい、疲れる前後の動きを比べています。
見た目の動きは、ほとんど変わりませんでした。
ところが、着地のときの足首は、疲れる前よりねじれる方向に硬くなっていました。
研究者たちは、こうした目に見えない変化が、使いすぎによるケガにつながる可能性を指摘しています。

バーで力を使い切れば、センターやジャンプは疲れた身体で踊ることになります。
動きの質の面でも、ケガ予防の面でも、もったいない使い方です。

バーは「全力を出す場所」ではなく「準備の場所」

バーは、身体を温め、正しい位置を確かめ、センターに向けて準備をする時間です。
手を抜いてよいという意味ではありません。
ただ、すべての動きに全力を込める必要はないということです。

大切なのは力の量ではなく、どこを、どの順番で使うかです。

バーで力を使い切らないための4つの工夫

ここから先は、研究ではなく、私がレッスンで大切にしていることです。

バーは握らず、手を添えるだけ

バーを握る手に力が入ると、肩や首までこわばり、余計な体力を使ってしまいます。
手のひらを軽くのせるくらいの感覚で、バーに触れてみてください。

働かせる筋肉を選ぶ

プリエで太ももの前側ばかりに力が入っていたり、ルルヴェでふくらはぎを固めすぎていたりしませんか。
脚の付け根や体幹で身体を支えると、脚の一部だけが疲れきるのを防げます。

息を止めない

難しい動きほど、つい呼吸が止まりがちです。
息を止めると、身体は固まりやすくなります。
動きの合間に、ゆっくり息を吐くことを意識してみましょう。

動きの合間に、力をふっと抜く

一つの動きが終わったら、次が始まるまでのわずかな時間に、肩や脚の力をふっと抜きましょう。
この小さな休憩の積み重ねが、センターでの余力になります。

センターで疲れを感じたら、調整していい

それでも疲れを感じたら、最後まで全力で踊りきろうとしなくて大丈夫です。

ジャンプの回数を減らす。
片脚の動きを、両脚に変える。
一度列から外れて、呼吸を整える。

これは、さぼりではありません。
疲れた状態で無理をしないことは、長くバレエを続けるための大切な判断です。

次のレッスンで試してほしいこと

体力は、レッスンを続けるうちに少しずつついてきます。
焦らず、自分の身体と相談しながら、力の配分を工夫していきましょう。

次のレッスンでは、まずバーに軽く手を添えるところから始めてみてください。
そしてバーが終わったところで、脚にまだ余力が残っているかを確かめてみましょう。

参考文献

Physiological Demands on Classic Ballet Class. FIEP Bulletin. 2015.
https://ojs.fiepbulletin.net/fiepbulletin/en/article/view/5345

Aman M, Brouner J. Consecutive Single-Leg Relevés Results in Altered Movement Pattern and Dorsiflexor and Plantarflexor Muscle Fatigue. Journal of Dance Medicine & Science. 2026;30(3).
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1089313X251347440

Mikkelsen P, Yamaguchi AC, Tang Y, Kulig K. Dancing Through Exertion: How Dancers Retain Lower Extremity Kinematics During Ballet Jumps. Journal of Dance Medicine & Science. 2026.
https://doi.org/10.1177/1089313X261443136

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