回転で目が回る大人バレエ初心者へ|ピルエットは45度から慣れる
明けましておめでとうございます。
今年も皆さんのバレエの上達と、バレエ界のより良い変化のために、できることを一つずつ積み重ねていきます。
こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
今回のテーマは、回転で目が回る、についてです。
バレエを指導していると、よくこういう相談を受けます。
「回転が怖いです」
「目が回って止まれません」
「倒れそうで、身体が固まります」
ピルエットやシェネなど、バレエには回転の動きがたくさんあります。
しかし、回転が苦手な人が最初から1回転を練習しようとすると、怖さや力みが強くなりやすいです。
結論から言うと、回転で目が回る人は、まず45度、つまり8分の1回転から始めてください。
大事なのは、たくさん回ることではありません。
小さく回って、止まって終えることです。
回転の怖さは根性の問題ではない
回転が怖いと、自分に才能がないように感じる人がいます。
でも、多くの場合、回転の怖さは根性の問題ではありません。
身体と脳が、回転による刺激にまだ慣れていないだけです。
目が回る。
足元が不安になる。
倒れそうに感じる。
身体が固まる。
この流れが起きると、回転そのものが怖くなります。
そして、怖い状態で無理に回転数を増やすと、失敗の経験が増えます。
失敗が増えると、身体は「回転は危ない」と覚えてしまいます。
だから、回転が苦手な人ほど、最初に必要なのは1回転ではありません。
小さい角度で、安心して止まれる経験です。
めまいやバランスの分野では、前庭リハビリテーションという考え方があり、運動を使ってめまいやバランスの問題に対応する方法が説明されています。Cleveland Clinicは、前庭リハビリテーションを、めまいやバランスの問題を管理するための運動療法として紹介しています。(Cleveland Clinic)
また、前庭リハビリには、視線を安定させる練習、姿勢の練習、バランス再訓練などが含まれると説明されています。(Cleveland Clinic)
もちろん、バレエの回転練習は医療リハビリではありません。
ただ、「小さい刺激から段階的に慣れる」という考え方は、回転が怖い人の練習設計として、とても参考になります。
45度回転で何を練習するのか
45度回転で狙うことは、回転数を増やすことではありません。
目的は2つです。
1つ目は、回転刺激に少しずつ慣れること。
2つ目は、回ったあとに止まれる身体を作ることです。
回転が苦手な人は、回っている最中だけでなく、止まる瞬間に不安が出ます。
どこを見ればいいかわからない。
足裏の感覚が消える。
上半身が固まる。
止まったあとに身体が流れる。
この状態で1回転を繰り返しても、上達より先に怖さが強くなります。
だから、まず45度で十分です。
45度回る。
2秒止まる。
呼吸を確認する。
足裏を確認する。
視線を戻す。
これを繰り返すことで、身体は少しずつ「回っても止まれる」と覚えていきます。
回転は、始まりよりも終わり方が大切です。
毎回、止まって終える。
これが回転への怖さを減らす近道です。
回転で目が回る人のための3分ルーティン
この練習は、スタジオでも自宅でもできます。
ただし、安全な場所で行ってください。
周りにぶつかるものがない場所で行うこと。
床が滑りすぎないこと。
気持ち悪さが強い日は、角度を増やさないこと。
そして、成功基準は「回れた」ではなく「止まれた」にしてください。
ステップ1|首だけスポットを練習する
最初は身体を回しません。
首と目線だけを使います。
正面を見る。
首を横に向ける。
素早く目線を正面に戻す。
これを左右10回ずつ行います。
目的は、目線が戻ってくる感覚を作ることです。
バレエの回転では、スポットがとても大切です。
スポットとは、回転中に目線をできるだけ一点に残し、最後に素早く頭を返して視線を戻す動きです。
回転が怖い人は、目線が迷いやすいです。
目線が迷うと、身体も不安になります。
だから、まずは回る前に、目線を戻す練習から始めます。
ステップ2|45度回転して2秒止まる
次に、45度だけ回ります。
足はパラレルで構いません。
腕も最初は自由で大丈夫です。
ここでは、バレエの形を完璧に作ることよりも、回ったあとに止まることを優先してください。
45度回る。
2秒止まる。
左右10回ずつ行います。
止まった瞬間に確認するのは、次の3つです。
呼吸が止まっていないか。
視線が戻っているか。
足裏で床を感じられているか。
足指で床をつかみすぎている場合や、肩と首が固まっている場合は、まだ緊張が強い状態です。
その日は角度を増やさず、45度のまま続けてください。
ステップ3|45度回転してから片足で立つ
45度で止まることに慣れてきたら、回転後に片足で立つ練習を入れます。
45度回る。
止まる。
パッセ、または片足立ちになる。
2秒止まる。
左右6回ずつ行います。
ここで大切なのは、回りながら全部をやろうとしないことです。
回る。
止まる。
形を作る。
この順番で分けます。
回転が怖い人ほど、回る前からパッセ、腕、顔、軸、足元を全部まとめて考えてしまいます。
その結果、身体が固まります。
まずは動きを分けてください。
分けてできるようになってから、少しずつつなげれば大丈夫です。
ステップ4|90度回転に進む
45度で安定して止まれるようになったら、90度に進みます。
90度回る。
2秒止まる。
左右4回ずつ行います。
ここでも、成功基準は同じです。
止まれたかどうか。
呼吸が普通にできているか。
怖さが増えていないか。
90度にした瞬間に怖さが強くなるなら、まだ45度の練習が足りません。
無理に進まず、45度に戻してください。
練習は、難しいことを無理にやるほど上達するわけではありません。
失敗しすぎるレベルで反復すると、怖さと力みも一緒に覚えてしまいます。
次の角度に進む目安
次に進んでよい目安は、次の3つです。
45度で左右どちらも2秒止まれる。
止まったあとも呼吸が乱れない。
練習後に怖さが増えていない。
この3つが揃っていれば、少しずつ角度を増やしていきます。
順番は、
45度。
90度。
135度。
180度。
270度。
最後に360度です。
135度は8分の3回転です。
270度が4分の3回転です。
どちらも、1回転に向かう前の良い練習になります。
最初から1回転を目指さなくて大丈夫です。
回転が苦手な人ほど、まずは小さく回って、確実に止まる経験を積んでください。
よくある失敗
回転が苦手な人によくある失敗は、4つあります。
1つ目は、回ったあとに止まらないことです。
止まらずに流れてしまうと、身体は回転を不安な動きとして覚えてしまいます。
2つ目は、回る前から身体を固めることです。
お腹、肩、首を固めすぎると、回転は余計に怖くなります。
支えることと、固めることは違います。
3つ目は、スポットを捨てることです。
目線が戻らないと、身体の戻る場所もわかりにくくなります。
4つ目は、調子が悪い日に新しい角度へ進むことです。
疲れている日、気持ち悪さがある日、不安が強い日は、角度を下げてください。
バレエの練習は、毎回限界に挑戦するものではありません。
良い感覚で終われる範囲を積み上げることが大切です。
医療機関への相談も考えてほしいサイン
回転が怖いだけなら、練習の設計で変わることは多いです。
ただし、すべてをバレエの練習で解決しようとしないでください。
日常生活でも強いめまいがある。
めまいが何度も繰り返される。
突然強いめまいが出る。
強い頭痛、吐き気、耳の聞こえ方の変化、歩きにくさ、しびれ、ろれつの回りにくさがある。
このような場合は、無理に練習を続けず、医療機関で相談してください。Mayo Clinicも、原因がはっきりしない、繰り返す、突然起こる、長く続く、生活に支障が出るめまいは医療機関に相談する目安だとしています。(Mayo Clinic)
バレエの練習としての目が回る感覚と、医学的に確認した方がよいめまいは分けて考える必要があります。
よくある質問
45度だけで本当にピルエットに効果がありますか?
あります。
ただし、45度の練習は、すぐに回転数を増やすための練習ではありません。
回転刺激に慣れること。
止まる感覚を作ること。
スポットを戻すこと。
足裏で床を感じること。
この土台を作るための練習です。
45度で止まれない人が、1回転で安定することは難しいです。
毎日やった方がいいですか?
負担が少ない範囲なら、短時間で毎日行う方が慣れやすいです。
1日1分でも構いません。
ただし、気持ち悪さが強い日や、日常生活でもめまいがある日は無理をしないでください。
スポットがうまくできない場合はどうすればいいですか?
身体を回す前に、首だけのスポット練習に戻ってください。
回転が苦手な人は、いきなり全身で練習すると、視線、首、足、腕、軸を同時に処理しようとして混乱します。
まず目線だけ。
次に45度。
その後に片足立ち。
この順番で十分です。
まとめ|回転は小さく始めて、止まって終える
回転で目が回る人は、いきなり1回転を練習しなくて大丈夫です。
まずは45度から始めてください。
小さく回る。
止まって終える。
短く反復する。
この3つを守るだけで、回転に対する怖さは少しずつ変わっていきます。
回転の上達に必要なのは、根性ではありません。
身体と脳が安心できる範囲で、回転刺激に慣れていくことです。
1日1分でも構いません。
負担にならない強度で、毎日少しずつ続けてください。
回転は、たくさん回る前に、まず止まれること。
そこから始めていきましょう。




