こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。
センターで、覚えたはずのアンシェヌマンを踊っていたのに、一つ間違えた途端、その先まで分からなくなった経験はありませんか?
右脚を出すところで左脚を出してしまい、直そうとしている間に、周りの人はもう次の動きへ進んでいる。
音楽はそのまま進んでいきます。
どこまで進んだか分からないと、入るきっかけがつかめません。
そこから先は、前の人の動きを目で追いかけるか、その場で立ち止まって曲が終わるのを待つか。
覚えていたはずなのに、途中からとなると難しいですよね。
振付を間違えること自体は、誰にでもあります。
困るのは、間違えた瞬間から、残りの部分を一度も踊らないままアンシェヌマンが終わってしまうことです。
最後の8カウントでジャンプの着地を練習するはずだったのに、止まっていたので一回もやっていない。
もう一度踊るときには最初から緊張していて、また同じところで分からなくなる。
これでは、間違えた部分より後の練習ができません。
間違えないように覚えることも必要です。
最後まで踊るために、途中から入り直す練習もしておきたいのです。
間違えたところを、あとから取り戻さなくていい
間違えたら、その場で正しく直したくなるでしょう。
左脚を出したのを右脚に直して、飛ばした動きを済ませてから次へ進もうとする。
でも、その間にも音楽は進んでいます。
飛ばした分をやっているうちに、次の動きの入りにも遅れてしまう。
慌てて追いつこうとして、形も方向も本来とは違うまま動いてしまう。
最初の間違いを直そうとして、分かっていたはずの次の動きまでできなくなってしまいます。
センターで移動している途中なら、これは自分の練習だけの問題ではありません。
周りの人にも進む場所があるので、急に向きを変えたり、遅れを取り返そうと走ったりすると、人とぶつかる危険があります。
音楽が進んでいる間は、間違えた部分をいったん飛ばして構いません。
自分が入れる次の動きに、音を合わせて戻ることを考えてください。
左右を逆にしてしまったときも、考え方は同じです。
ただ、反対の脚のまま最後まで続ければよい、というわけではありません。
そのあとに移動や回転があれば、周りとは違う方向へ進んでしまうかもしれません。
左右を合わせようとして、足を何度も踏み替えるのも避けたいところです。
例えば、次の動きを右脚で始めたいのに、その右脚に体重が乗っていたら、すぐには出せません。
見えている足の形だけを合わせるのではなく、入りたい動きの前にどちらの脚で立っている必要があるかまで確かめます。
その準備が間に合わないなら、無理にそこへ入らず、もう少し先から戻るほうがよいでしょう。
前の人を目で追いかけて戻ろうとする方もいるでしょう。
見て思い出せるなら、それも一つの手がかりです。
ただ、人の動きを見てから自分が動くので、どうしても少し遅れます。
次に何をするか分からないまま追いかけ続けると、入るタイミングもつかみにくいでしょう。
見本を追いかけることと、自分で振付を思い描いて踊ることの違いは、以前にレッスンで先生の見本ばかり見ていても上達できない理由でも書きました。
人を見るなら、今どの動きをしているかを確かめ、次に自分が何をするかを思い出すために使いたいところです。
動きの順番だけで覚えていると、戻る場所が見つからない
振付を覚えるとき、皆さんは何を頼りにしているでしょうか。
タンデュ、タンデュ、パ・ド・ブーレ、それからピルエット。
そんなふうに、動きの名前を順番に並べて覚えていませんか?
順番だけで覚えた振付は、最初から順にたどっていくときには思い出せます。
ただ、前の動きを手がかりに次を思い出していると、一つ抜けたときに困ります。
ピルエットの次を思い出そうとしているのに、頭の中では最初のタンデュからやり直している。
その間に、音楽はさらに先へ進んでしまいます。
間違えたあとに頭が真っ白になるのは、覚えていないからとは限りません。
最初からなら思い出せても、途中から始めることには慣れていないのかもしれません。
戻る場所を見つけるには、動きと一緒に、それが音楽のどこにあるかを覚えておく必要があります。
例えば、先生が8カウントずつ区切って説明した振付なら、最初の8カウントはタンデュ、次の8カウントはパ・ド・ブーレから、と動きと区切りを一緒に覚えます。
すると、最初のタンデュで間違えても、次の区切りからパ・ド・ブーレに入ることを考えられます。
ただし、どの振付も8ずつ数えれば合うわけではありません。
曲や振付によって数え方や動き始める位置は違うので、そのレッスンで先生が示したカウントを確かめてください。
数えることに慣れていなければ、「ここは何の音で始めますか」と、動きを示して聞いてもよいです。
音楽の「ワン」が聞き取れても、それが振付の何回目の「ワン」なのか分からなければ、入る場所は決まりません。
最初からずっと数え続けるのが難しい人は、その動きのときに聞こえる旋律も手がかりにしてみてください。
同じ旋律が繰り返される曲なら、前半と後半で何が違うかも、動きと合わせて確認します。
もう一つの目印は、向きや場所が変わるところです。
正面から斜めに向き直るところや、移動を始める一歩なら、同じ振付を踊っている人を見て、今どこまで進んだか確かめられます。
「次は斜めを向いてアラベスク」と思い出せたら、どちらの脚で立ち、どの音でその形になるのかも思い出してみてください。
完成したポーズだけ分かっていても、そこへ入る動きが分からなければ、音には合わせられません。
戻る場所は、間違える前に作っておく
先生が振付を説明している間に、途中からでも思い出せそうなところを探してみてください。
踊り始める前なら、そこが何の動きか、音楽のどこなのかを落ち着いて確かめられます。
先生がアンシェヌマンを説明するときは、「ワン、ツーでタンデュ、スリーで閉じて」のように、動きと一緒にカウントを言っている場合がよくあります。
動きの名前だけを追いかけずに、このカウントにも耳を向けてみてください。
最初からすべての動きとカウントを覚えようとすると、追いつかないかもしれません。
まずは、途中の区切りで何を始めるかを一つ覚えてみましょう。
例えば、二つ目のまとまりはパ・ド・ブーレから、三つ目のまとまりは向きを変えてアラベスクから。
一つ覚えられたら、もう一つ、と途中から思い出せる場所を増やしていきます。
タンデュのように何度も出てくる動きを目印にすると、戻ったつもりの場所が実は別のまとまりだった、ということが起きます。
一回しか出てこない動きがあれば、目印にしやすいでしょう。
同じ動きが繰り返されるなら、「右に進んだあとのタンデュ」のように、その前の移動と一緒に覚えてもよいです。
技の名前だけで区別しようとしなくて構いません。
また、見つけやすい動きと、途中から入りやすい動きは同じとは限りません。
ピルエットは目につきますが、回り始めたところへ急に加わろうとしても、準備がありません。
回転の前の足の位置やプリエから合わせられるか、難しければ回転が終わったあとに入れるかを考えてください。
先生がカウントを言わずに説明する場合もあります。
そのときは、音楽が流れ始めたら頭の中で一度なぞってみて、区切りがどこにあるかを確かめておきます。
分からなければ、「二つ目のまとまりは何から始まりますか」と先生に確認してください。
振付の確認ですから、遠慮しなくて構いません。
目印を決めたら、その目印から思い出せるかも試しておきます。
最初から順番になぞるのではなく、「三つ目のまとまりから」と決めて、そこから最後までを頭の中で踊ってみる。
そこから思い出せなければ、何の動きが続くかをもう一度確かめます。
名前は言えるけれど足順が分からないなら、頭の中だけで済ませず、周りの邪魔にならない場所で小さく動いて確認してください。
自分の番を待っている間も、目印を確かめる時間になります。
前の組が踊っているのを、ただ眺めるのではなく、音楽と一緒に見てみてください。
同じ振付を踊っている組なら、目印の動きがどの音に合っているかを確認できます。
手を小さく動かして、マーキングしながら確かめるのもいいでしょう。
音楽の区切りがなかなか聞き取れない、という方もいるでしょう。
先生に曲名を教えてもらえるなら、習った曲を聴き直し、目印の動きが来るところを探してみてください。
踊らずに聴くと、動いている間には聞き逃していた音に気づくかもしれません。
自分で数えた位置が合っているか分からなければ、次のレッスンで先生に確かめてもらいます。
分からないまま数え続けるより、短い部分でも音と動きの関係を確認したほうが、戻る手がかりになります。
バーレッスンも、戻る練習に使えます。
移動の少ない内容なら、センターよりも入り直す場所を確かめやすいでしょう。
順番が分からなくなったら、先生の合図を聞き、次の区切りの足と向きを準備して入ってみる。
バーを持っていても、隣の人との間隔には気をつけながら試してください。
間違えた直後の数カウントを、どう過ごすか
目印を決めていても、間違えた瞬間には思い出せないかもしれません。
さっきの足が違った、と考えているうちに、次の入りを逃すこともあるでしょう。
間違えたら、まず動きを小さくして、音楽を聞いてください。
周りが移動しているときは、その場に立ち続けることも、慌てて端へ走ることも、人の進路をふさぐ場合があります。
先生の指示を受け、周りの進路を確かめながら、動きを続けられるか、いったん外れるかを判断してください。
入る場所が分かっても、そこへ行くために人の前を横切る必要があるなら、無理に戻りません。
例えば、四つのまとまりでできたアンシェヌマンで、二つ目の途中で左右を取り違えたとします。
三つ目がアラベスクなら、二つ目をやり直すより、その前の立ち位置と軸脚を確認します。
周りの人とぶつからずに準備できて、入る音も分かれば、三つ目から再開できます。
音を聞こうとしても、今どこなのか判断できないときもあります。
その場合は、先生のカウントや声かけを手がかりにして構いません。
どの動きか分からないまま、音だけに合わせて飛び込む必要はありません。
次の目印が来ても、そこで何をするのか思い出せないこともあるでしょう。
そのときは、さらに次の目印まで待ちます。
最後のまとまりにしか戻れなかったとしても、最後のポーズまで踊れば、その回の終わり方は練習できます。
その回に戻れなかったら、次に受ける説明やほかの組の踊りで、入れそうだった場所を確かめてください。
足順が分からなかったのか、音を見失ったのか、準備する時間がなかったのか。
戻れなかった理由によって、次に確かめることは違います。
踊り終わったら、間違えた場所も思い出してみてください。
「二つ目のまとまりの途中で、左右を逆にした」と分かれば、もう一度踊る前にそこを確かめられます。
途中から戻ることばかり練習して、間違えた部分を分からないままにするのも困ります。
曲が終わってから、その少し前の動きとつなげて足順を確認しましょう。
踊っている最中に入り直すことと、終わったあとに間違いを直すことは、両方必要です。
「止まらないで」だけでは、戻り方は分からない
戻る場所が分からずに止まってしまうのは、生徒さんの覚え方だけの問題ではありません。
「間違えても止まらないで」と言うのは簡単です。
でも、どこから戻ればいいのかを知らない人にそれだけを伝えても、慌てて前の人を追いかけるしかありません。
例えば、途中から入れない人には、音楽を止めて、その場所の足と向きを一緒に確認できます。
そこから動けるようになったら、少し前から音楽をかけて、自分で入るタイミングをつかめるかを試す。
順番は分かっていても音を見失うなら、入りの前にカウントを伝えることで、どこを聞けばよいか説明できます。
生徒が戻れなかったとき、最初から全部やり直させるだけでは、途中から入る練習になりません。
間違えた場所を直す時間とは別に、戻り方を教える時間も必要です。
次のレッスンでは、センターの振付の途中に、入り直す場所を一つ決めてみてください。
自分の番を待つ間に、そこへ入る前の足と向き、動き始める音を確かめておきます。
どこを選べばよいか迷ったら、「途中で分からなくなったら、ここから入れますか」と、動きを示して先生に確認してみてください。




