こんにちは、大人バレエアカデミー™、バレエトレーニングディレクターの猪野です。

バレエのスタジオでこういう人をみたことないですか?

開脚は深い。背中も反れる。
見た目の身体条件は優秀。

ところが踊ると、形が崩れる。軸が定まらない。動きが散る。
結果として「下手に見える」。

体が柔らかいことが求められそうなバレエにおいて、

その条件を持ちながら、なんだかすごく期待を裏切られた感じは何なのかを

今回は解説したいと思います。

 

結論として、なぜ柔らかいのに下手なのか

原因は「出力」と「制御」のアンバランスです。

柔軟性があること自体は利点です。持っておいてください。

それは一つの宝物です

ただし、その可動域を筋肉で管理できないと、動きは安定しません。

宝物も使いこなせなければ足を引っ張ります。

整理すると不足しているのは主にこの3つです。

・支持力:そのポジションを維持する筋力
・制御力:任意の角度で止める力(減速と静止の能力)
・固有感覚:いま関節がどの角度にあるかを感じ取る精度

「柔軟性が高い人ほど、関節の終末域に寄りかかりやすい」という傾向もあります。
膝の過伸展(ロック)などが典型です。

膝を伸ばすのを通り越して、逆方向に膝が曲がっている人を見たことがないですか?あれです。

それは安定ではなく、単に「止められていない」状態です。

わかってはいるけど、止められない。そんなことでは上達はないです。

受動の可動域と、能動の可動域は別物

ここが重要です。

・受動的可動域:外力(手で押す、勢いで乗る)で出る範囲
・能動的可動域:自力で動かし、自力で止められる範囲

バレエで使うべきなのは後者です。踊りなので、自分でコントロールをしてください。

ダンサーに多い「関節が動きやすい(ハイパーモビリティ)」は、利点でもありますが、制御が弱いと不安定さの原因になります。ダンサーの関節過可動と障害・身体能力の関連は研究でも論点になっており、関連が示唆される一方で結論が一様ではない領域です。

「筋力を鍛えれば解決?」への答え

半分は正解です。

必要なのは、単なるパワーではありません。
特定のレンジで「止める」ための出力です。

言い換えると「最後まで持っていく力」より「途中で止める力」を先に作るべきです。こうなると鍛えるは神経による制御で、ここがないと鍛えた筋肉が機能しないので、マシにはなりますが解決しないです。

優先順位を入れ替える

改善の順番はこうです。

1)まずコントロール(止める)
2)次に支持(保つ)
3)柔らかさは、その後に足す

レッスン直前の長い静的ストレッチは、基本的におすすめしません。
静的ストレッチは条件次第で、直後の筋力・パワーが低下しうることが繰り返し報告されています(特に長時間)。

そもそも体が柔らかいから困っているのに、さらに柔らかくする合理性がないかを疑う必要があります。

判定用チェック(当てはまるほど「止める練習」不足)

・能動域の不足:手で上げれば上がるのに、自力ではそこまで上がらない
・体幹の漂流:反ると骨盤位置が維持できず、連動して崩れる
・膝の過伸展:無意識に膝を後ろへ押し込み、ロックして立つ

推奨ルーティン(基準は「高さ」ではなく「静止」)

目安は「2秒止まる」。短くていいです。それでも結構大変です。
止められたら、角度を増やします。

・能動レンジの確立:バーで脚を上げ、自力の高さで2秒止める(低くて可)
・固有感覚の練成:片脚立ちで2秒止まる(慣れたら視線や視覚条件を変える)
・ニュートラルの維持:膝を押し込まない。足裏の三点で床を捉え続ける

固有感覚やバランス系のトレーニングが、関節位置覚や姿勢制御を改善しうることは幅広い領域で整理されています。

ストレッチもいいですが鍛えることは忘れないようにしましょう

最後に

「柔らかいのに下手」は、素材の問題ではありません。
素材(柔軟性)に対して、扱う技術(制御)が足りていないだけです。

やることはシンプルです。

・受動で稼いだ可動域をいったん脇に置く
・自力で動かし、自力で止める範囲を先に作る
・止められる範囲が増えたら、柔軟性は勝手に「使える資産」になります

地味ですが、「止まる練習」が最短です。

土台の練習は全部地味です。派手な練習は楽しいかもしれませんが、自分に何が必要かを考えましょう。


 

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